この章のまとめ
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部 第5章 §4.5.7 ★★★ Landauer 原理は と の非負性。消去の下限は記憶の自由エネルギーの差で、測定と消去の和だけが相互情報量で押さえられる
比べた分布は2組あった。1組目は記憶の論理状態の分布 と記憶の平衡分布 で、局所平衡にある記憶の非平衡の自由エネルギーは 、その余りは である(命題 4.5.1)。論理状態は局所自由エネルギー を持つ準位として扱え、 が状態ごとに違う記憶を非対称な記憶と呼んだ。2組目は熱浴の操作の後の分布と Gibbs 分布で、記憶と熱浴を可逆な力学で動かすと、熱浴へ出る熱は記憶のエントロピーの減り・記憶と熱浴の相互情報量・熱浴の の和に正確に等しい(定理 4.5.2)。Landauer 原理 は、この等式から非負の2項を捨てたもので、熱浴が有限なら捨てた2項は正の値を残す。
当てた の性質は非負性で、出てきたものは3つある。第一に、仕事で書いた一般形 で、偏った中身・不完全な消去・非対称な記憶をまとめて扱える(定理 4.5.3)。非対称な記憶では消去の仕事が を下回るが、微視的なエントロピーまで数えれば熱の不等式は保たれている。素朴な手順の余分は である。第二に、測定と消去のコストは和だけが で下から押さえられ、配分は記憶の作りで決まる(定理 4.5.4)。Brillouin の「測定にコスト」と Bennett の「消去にコスト」は、配分の特別な場合である。第三に、測定・フィードバック・消去の1周の帳尻は、系と記憶を合わせた全体の第二法則そのもので、Maxwell の悪魔は第二法則を破らない。論理ゲートの消去のコストは である。
消去の下限に近づくには操作を準静的にしなければならず、有限の時間で消すと余分が出る。その余分の大きさと、精度との兼ね合いは 第4部第6章 の熱力学的不確定性関係と速度限界で扱う。記憶が量子ビットのとき、等式 (4.5.6) は量子相対エントロピーの形でそのまま成り立つ。量子の記憶に固有の問題(重ね合わせの消去・エンタングルした記憶)は 第4部第8章 で扱う。
要点
- 局所平衡の記憶:、、。
- Reeb–Wolf の等式:。Landauer 原理は 。
- 一般形:。対称・五分五分で 、偏りで 、非対称で 。
- 測定 、消去 、和 。フィードバック と合わせて1周 。
- 論理ゲートのコスト 。可逆なゲートはコストを先送りする。
総合問題 非対称な記憶を持つ悪魔の1周 ★★★
オリジナル温度 の熱浴に接した Szilard エンジン(1分子の箱、左右は五分五分)を、悪魔が次の記憶で動かす。記憶は平らなポテンシャルの箱で、標準の状態0の部屋の長さが 、状態1の部屋の長さが ()である。悪魔の測定は確率 で左右を取り違え、「左」と読んだら記憶を0に、「右」と読んだら1にする。
- (1) 測定の後の記憶の分布 と、記憶の平衡分布 の を求めよ。また を求めよ。(使う道具:4.5.1 節)
- (2) 測定の仕事の下限を求めよ。(使う道具:4.5.4 節、第1部第3章 の2値対称通信路の相互情報量)
- (3) フィードバックで取り出せる仕事の上限を求めよ。(使う道具:第4部第4章 の測定とフィードバックを含む第二法則)
- (4) 記憶を標準の状態0へ消す仕事の下限を求めよ。(使う道具:4.5.3 節)
- (5) 1周の正味の仕事が0を超えないことを確かめよ。(使う道具:4.5.5 節)
- (6) 記憶を、仕切りを抜いて長さ に広げてから長さ へ押し込む素朴な手順で消すと、仕事はいくらか。(4) の下限との差を で説明し、(5) の帳尻がどうなるかを述べよ。(使う道具:4.5.3 節、第4部第1章 の急な操作の余分)
解答
(1) 系が左右五分五分で、測定は左右について対称に誤るので、記憶の分布は である。平らな部屋では で、平衡分布は部屋の長さに比例する である。 nat である。式 (4.5.3) から である。
(2) 相関は2値対称通信路の相互情報量 である。式 (4.5.12) から である。この記憶では、広い方の部屋へ書き込む分と、誤りで乱数を書き込む分の両方で、測定は仕事を取り出しながら行える。誤りが無くても(、)下限は で、 のこの記憶ではどの でも測定の下限は負である。
(3) 式 (4.5.15) で系は1周で元に戻る()ので、 である。具体的には、「左」と読んだら仕切りを左の部屋が全体の になる位置まで準静的に動かし、「右」と読んだら逆にすると、取り出す仕事の平均は で上限に達する。
(4) 消去は記憶の分布を から へ戻す操作で、式 (4.5.13)()から である。対称な記憶の より高い。標準の状態を狭い方の部屋に取ったので、消去が高くつき、その分だけ (2) の測定が安くなっている。
(5) 1周の正味の取り出しは である。3つの段階をすべて準静的に行ってちょうど0で、第二法則に反する機関にはならない。記憶の作りの効果 は (2) と (4) で打ち消し合い、残るのは相関の の出し入れだけである。
(6) 仕切りを抜くと粒子は長さ に広がり(仕事0)、それを長さ へ等温準静的に押し込む仕事は である。(4) の下限との差は で、(1) の に等しい。仕切りを抜くのは急な操作で、そのとき記憶の分布 が新しい平衡分布 からずれている分 が、そのまま として失われる(第4部第1章の急な操作の余分)。この手順を使うと1周の正味は になり、悪魔は1周ごとにその分だけ損をする。損を0にするには、仕切りを抜く前に部屋の長さの比を にそろえておけばよい( にしてから抜く)。熱で見ても同じで、平らな部屋なので消去の熱は仕事に等しく、下限 は位置のエントロピーの減り に等しい。
木下の勉強ステータス
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