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この章のまとめ

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第8章 量子熱力学

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部 第8章 §4.8.7 ★★★ 比べるのは今の状態と熱状態。熱状態を動かさないチャネルは DD を増やさず、その減りがエントロピー生成。消去・熱機関・資源理論の限界はすべて DD とその仲間で書ける

この章では、量子の系の非平衡の状態を、同じ Hamiltonian の熱状態と比べた。仕事は Hamiltonian の変化、熱は状態の変化として分け、kBT D(ρ^ ∥ ρ^β)k_{\mathrm B} T\,D(\hat\rho\,\|\,\hat\rho_\beta) が非平衡の自由エネルギーの余りであることを確かめた。量子の場合の DD は、占有数の分とコヒーレンスの分の和に分かれる(式 (4.8.4))。熱浴を使わない周期的な操作で取り出せる仕事は ergotropy で、受動的な状態からは 00 だが、熱浴があれば DD の分まで取り出せる。

当てた性質は量子データ処理不等式で、系と熱浴をまとめてユニタリで動かすと、エントロピー生成は終わりの全体の状態と「熱浴だけを平衡に戻した状態」の DD に等しい(定理 4.8.2)。エネルギーを保つ相互作用ではそれは系の DD の減りで、連続時間では Spohn の不等式になる。

出てきたものは3つある。第一に、消去で熱浴へ流れる熱の下限 −kBTΔSS- k_{\mathrm B} T\Delta S_{\mathrm S}(Landauer 原理)は等式の形で書け、余分は相関と熱浴のずれである。段に分けると余分は DD の和になり、Fisher 情報を通じて段の数に反比例して減る。第二に、2準位の Otto サイクルの効率は 1−ωc/ωh1-\omega_{\mathrm c}/\omega_{\mathrm h} で、Carnot の効率との差は1サイクルのエントロピー生成、すなわち2つの熱状態の DD の両向きの和で決まる。第三に、熱的操作の資源理論では、自由エネルギー1つの代わりに DαD_\alpha の族が並び、1回きりの仕事は D0D_0、作るコストは D∞D_\infty、多数回の平均で DD に揃う。熱的操作はエネルギーの重ね合わせを作れず、コヒーレンスの分は単独では仕事にならない。

第4部の章を通して、第二法則は、熱状態(または逆回しの経路の確率)を動かさない写像で DD が増えないという1つの不等式の姿をとった。実験でこれらの量を測った例は 第4部第7章 にまとめてある。量子の系のエントロピーとエンタングルメントの話は第5部(多体系)と第7部(ブラックホール)で、熱状態を純粋化のエンタングルメントとして読む形で再び現れる。

要点

  • d′W=Tr⁡ρ^ dH^\mathrm{d}' W=\operatorname{Tr}\hat\rho\,\mathrm{d}\hat H、d′Q=Tr⁡H^ dρ^\mathrm{d}' Q=\operatorname{Tr}\hat H\,\mathrm{d}\hat\rho。F(ρ^)−Feq=kBT D(ρ^ ∥ ρ^β)=kBT[D(ΔB(ρ^) ∥ ρ^β)+S(ΔB(ρ^))−S(ρ^)]F(\hat\rho)-F_{\mathrm{eq}}= k_{\mathrm B} T\,D(\hat\rho\,\|\,\hat\rho_\beta)= k_{\mathrm B} T[D(\Delta_{\mathcal B}(\hat\rho)\,\|\,\hat\rho_\beta)+S(\Delta_{\mathcal B}(\hat\rho))-S(\hat\rho)]。
  • ergotropy W(ρ^)=Tr⁡ρ^H^−∑krk↓Ek↑\mathcal W(\hat\rho)=\operatorname{Tr}\hat\rho\hat H-\sum_kr_k^{\downarrow}E_k^{\uparrow}(熱浴なし)。熱浴ありの上限は kBT Dk_{\mathrm B} T\,D。
  • ΔSS−βQ=I(S;B)ρ′+D(ρ^B′ ∥ ρ^Bβ)=D(ρ^SB′ ∥ ρ^S′⊗ρ^Bβ)\Delta S_{\mathrm S}-\beta Q=I(\mathrm S;\mathrm B)_{\rho'}+D(\hat\rho'_{\mathrm B}\,\|\,\hat\rho^\beta_{\mathrm B})=D(\hat\rho'_{\mathrm{SB}}\,\|\,\hat\rho'_{\mathrm S}\otimes\hat\rho^\beta_{\mathrm B})。エネルギー保存なら =−ΔD(ρ^S ∥ ρ^β)=-\Delta D(\hat\rho_{\mathrm S}\,\|\,\hat\rho_\beta)。
  • Landauer:βQB=−ΔSS+I+D≥−ΔSS\beta Q_{\mathrm B}=-\Delta S_{\mathrm S}+I+D\ge-\Delta S_{\mathrm S}。NN 段の消去の余分 =kBT∑kD(πxk−1 ∥ πxk)≈kBTX2N(12−p1(X))= k_{\mathrm B} T\sum_kD(\pi_{x_{k-1}}\,\|\,\pi_{x_k})\approx k_{\mathrm B} T\frac{X}{2N}(\frac12-p_1(X))。
  • Otto:η=1−ωc/ωh\eta=1-\omega_{\mathrm c}/\omega_{\mathrm h}、Σcyc=D(pc ∥ ph)+D(ph ∥ pc)\Sigma_{\mathrm{cyc}}=D(p_{\mathrm c}\,\|\,p_{\mathrm h})+D(p_{\mathrm h}\,\|\,p_{\mathrm c})、ηC−η=kBTcΣcyc/Qh\eta_{\mathrm C}-\eta= k_{\mathrm B} T_{\mathrm c}\Sigma_{\mathrm{cyc}}/Q_{\mathrm h}。
  • 資源理論:1回きりの仕事 ≤kBT D0\le k_{\mathrm B} T\,D_0、作るコスト kBT D∞k_{\mathrm B} T\,D_\infty、多数回で kBT Dk_{\mathrm B} T\,D。熱的操作は ΔB\Delta_{\mathcal B} と可換。

総合問題 2準位の熱機関で1ビットを消す ★★★

オリジナル例題 4.8.4 と同じ Otto サイクル(Th=2TcT_{\mathrm h}=2T_{\mathrm c}、ℏωh=2kBTc\hbar\omega_{\mathrm h}=2 k_{\mathrm B} T_{\mathrm c}、ℏωc=1.2 kBTc\hbar\omega_{\mathrm c}=1.2\, k_{\mathrm B} T_{\mathrm c})を回し、取り出した仕事を温度 TcT_{\mathrm c} の環境での記憶の消去に使う。エネルギーは kBTck_{\mathrm B} T_{\mathrm c} を単位に測る。

  1. (1) 1サイクルの仕事 −W-W、高温の熱浴からの熱 QhQ_{\mathrm h}、効率 η\eta、Carnot の効率 ηC\eta_{\mathrm C} を求めよ。(使う道具:4.8.4 節)
  2. (2) 1サイクルのエントロピー生成 Σcyc\Sigma_{\mathrm{cyc}} を求め、ηC−η=kBTcΣcyc/Qh\eta_{\mathrm C}-\eta= k_{\mathrm B} T_{\mathrm c}\Sigma_{\mathrm{cyc}}/Q_{\mathrm h} を確かめよ。(使う道具:4.8.2 節・4.8.4 節、第4部第3章 のエントロピー生成)
  3. (3) 行程 B(膨張)の終わりの状態は、間隔 ωc\omega_{\mathrm c} の Hamiltonian について受動的であることを示し、そのときの D(ph ∥ pc)D(p_{\mathrm h}\,\|\,p_{\mathrm c}) を求めよ。この DD は (2) の Σcyc\Sigma_{\mathrm{cyc}} のどの部分か。(使う道具:4.8.1 節、第3部第2章 の量子 Gibbs の変分原理)
  4. (4) 1ビットの記憶を温度 TcT_{\mathrm c} で準静的に消すのに要る仕事は kBTcln⁡2k_{\mathrm B} T_{\mathrm c}\ln2 である。これをこの機関の仕事でまかなうには、少なくとも何サイクル回す必要があるか。(使う道具:4.8.3 節、第4部第5章 の Landauer 原理)
  5. (5) (3) の状態を1個だけ手にしたとき、温度 TcT_{\mathrm c} の熱浴を使う熱的操作で確実に取り出せる仕事と、熱状態からこの状態を作るのに要る仕事を求めよ。(使う道具:4.8.5 節、第1部第8章 の大偏差)
解答

(1) 例題 4.8.4 のとおり ph=0.2689p_{\mathrm h}=0.2689、pc=0.2315p_{\mathrm c}=0.2315 で、−W=0.0300-W=0.0300、Qh=0.0749Q_{\mathrm h}=0.0749、η=1−1.2/2=0.40\eta=1-1.2/2=0.40、ηC=1−12=0.50\eta_{\mathrm C}=1-\frac12=0.50 である。

(2) 式 (4.8.17) から Σcyc=(xc−xh)(ph−pc)=0.2×0.03746=0.00749\Sigma_{\mathrm{cyc}}=(x_{\mathrm c}-x_{\mathrm h})(p_{\mathrm h}-p_{\mathrm c})=0.2\times0.03746=0.00749 である。kBTcΣcyc/Qh=0.00749/0.0749=0.100=ηC−ηk_{\mathrm B} T_{\mathrm c}\Sigma_{\mathrm{cyc}}/Q_{\mathrm h}=0.00749/0.0749=0.100=\eta_{\mathrm C}-\eta となる。1サイクルで2つの熱浴のエントロピーは合わせて 0.00749 kB0.00749\, k_{\mathrm B} 増え、その分 kBTcΣcyc=0.0075k_{\mathrm B} T_{\mathrm c}\Sigma_{\mathrm{cyc}}=0.0075 だけ Carnot の機関より仕事が少ない。

(3) 行程 B では占有数が保たれるので、終わりの状態は (1−ph,ph)=(0.7311,0.2689)(1-p_{\mathrm h},p_{\mathrm h})=(0.7311,0.2689) の対角の状態で、Hamiltonian は H^(ωc)\hat H(\omega_{\mathrm c}) である。エネルギーの低い ∣0⟩| 0 \rangle の占有数が大きいので受動的で、ergotropy は 00 である。熱浴を使わない周期的な操作では、この状態から仕事は取り出せない。低温の熱状態は (0.7685,0.2315)(0.7685,0.2315) なのでD(ph ∥ pc)=0.7311ln⁡0.73110.7685+0.2689ln⁡0.26890.2315=0.00381D(p_{\mathrm h}\,\|\,p_{\mathrm c})=0.7311\ln\frac{0.7311}{0.7685}+0.2689\ln\frac{0.2689}{0.2315}=0.00381 である。これは行程 C の完全な緩和で生じるエントロピー生成で、Σcyc\Sigma_{\mathrm{cyc}} のうち低温の熱浴との接触の分である(残りの 0.003680.00368 が行程 A の分)。低温の熱浴を使えばこの DD の分 0.0038 kBTc0.0038\, k_{\mathrm B} T_{\mathrm c} を仕事として取り出せたはずで、Otto サイクルはそれを熱として捨てている。

(4) ln⁡2/0.0300=23.1\ln2/0.0300=23.1 なので、少なくとも 24 サイクル回す必要がある。実際の消去は有限の段数で行うので、4.8.3 節の余分の分だけさらに多く要る。

(5) 状態 (0.7311,0.2689)(0.7311,0.2689) は両方の準位に確率を持つので D0=−ln⁡(0.7685+0.2315)=0D_0=-\ln(0.7685+0.2315)=0 で、確実に取り出せる仕事は 00 である。作るのに要る仕事は kBTcD∞=kBTcln⁡max⁡(0.73110.7685,0.26890.2315)=kBTcln⁡1.162=0.150 kBTck_{\mathrm B} T_{\mathrm c}D_\infty= k_{\mathrm B} T_{\mathrm c}\ln\max\bigl(\frac{0.7311}{0.7685},\frac{0.2689}{0.2315}\bigr)= k_{\mathrm B} T_{\mathrm c}\ln1.162=0.150\, k_{\mathrm B} T_{\mathrm c} である。平均の D=0.00381D=0.00381 はこの2つの間にあり、多数の複製を集めたときだけ1個あたり 0.0038 kBTc0.0038\, k_{\mathrm B} T_{\mathrm c} を取り出せる。1個の系では、取り出せる量と作るコストの差が DD そのものより40倍ほど大きい。

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