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橋:大正準の Fock 空間と基準の正準の状態

2026年10月17日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第5章 熱平衡と占有数:Bose 分布と Fermi 分布
目次
  1. 両向きの同値
  2. 同じ分布の4つの出し方
  3. 学部の統計力学の書き方との対応
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第6部 第5章 §6.5.6 ★★★ Fock 空間の大正準の状態を粒子数で切ると基準の NN 粒子の正準の状態になり、逆に正準の状態を重みで足すと大正準の状態になる。第4部・第3部・第8部の熱平衡と同じものであることを並べる

両向きの同値

この章の結果が同値性の地図(第1部第1章)のどの橋に当たるかを確かめる。地図では、第二量子化(第6部)から密度行列(第4部)へ「熱平衡の占有数」の矢印が引かれている。その中身は次の命題である。第2章の命題(第6部第2章)で、Fock 空間の NN 粒子の部分 HN±\mathcal{H}_N^\pm と、基準の NN 粒子の対称化(反対称化)した波動関数の空間はユニタリ写像 UNU_N でつながり、H^\hat H は HN±\mathcal{H}_N^\pm の上で基準の NN 粒子のハミルトニアン H^(N)\hat H^{(N)} に移る。

命題 6.5.6(大正準と正準の両向きの対応 ★★★)

P^N\hat P_N を Fock 空間から HN±\mathcal{H}_N^\pm への射影とする。

  1. (i) (第二量子化 → 基準)P(N)≔Tr⁡P^Nρ^G=zNZN/ΞP(N)\coloneqq\operatorname{Tr}\hat P_N\hat\rho_{\mathrm G}=z^NZ_N/\Xi で、P(N)>0P(N)>0 のとき

P^Nρ^GP^NP(N)=UN† e−βH^(N)ZN UN\frac{\hat P_N\hat\rho_{\mathrm G}\hat P_N}{P(N)}=U_N^\dagger\,\frac{\mathrm{e}^{-\beta\hat H^{(N)}}}{Z_N}\,U_N

が成り立つ。右辺の e−βH^(N)/ZN\mathrm{e}^{-\beta\hat H^{(N)}}/Z_N は、基準の NN 粒子系の第4部第4章の熱平衡の状態である。2. (ii) (基準 → 第二量子化)逆に、各 NN の基準の熱平衡の状態 ρ^Ncan=e−βH^(N)/ZN\hat\rho_N^{\mathrm{can}}=\mathrm{e}^{-\beta\hat H^{(N)}}/Z_N を Fock 空間へ移して、重み zNZN/Ξz^NZ_N/\Xi で足したもの∑N(zNZN/Ξ) UNρ^NcanUN†\sum_N(z^NZ_N/\Xi)\,U_N\hat\rho_N^{\mathrm{can}}U_N^\dagger は ρ^G\hat\rho_{\mathrm G} に等しい。この重みは、各 NN の中の状態を正準に固定したうえで、Ω[ρ^]\Omega[\hat\rho] (6.5.4) を最小にする重みとしてただ1つに決まる。

証明

(i) [H^, N^]=0\left[\hat H,\,\hat N\right]=0 なので H^\hat H は各 HN±\mathcal{H}_N^\pm を保ち、e−β(H^−μN^)=⨁NeβμNe−βH^∣HN±\mathrm{e}^{-\beta(\hat H-\mu\hat N)}=\bigoplus_N\mathrm{e}^{\beta\mu N}\mathrm{e}^{-\beta\hat H|_{\mathcal{H}_N^\pm}} と区分対角に書ける。P^N\hat P_N で挟むと NN 番目のブロックだけが残り、そのトレースは zNZNz^NZ_N である。ブロックを UNU_N で基準の空間へ移すと H^∣HN±\hat H|_{\mathcal{H}_N^\pm} は H^(N)\hat H^{(N)} に移るので、正規化して主張を得る。

(ii) 足したものは区分対角で、NN 番目のブロックは (zNZN/Ξ)e−βH^∣HN±/ZN=zNe−βH^∣HN±/Ξ(z^NZ_N/\Xi)\mathrm{e}^{-\beta\hat H|_{\mathcal{H}_N^\pm}}/Z_N=z^N\mathrm{e}^{-\beta\hat H|_{\mathcal{H}_N^\pm}}/\Xi なので、(i) の分解と同じ ρ^G\hat\rho_{\mathrm G} である。重みの一意性は、ブロックの中を正準に固定した状態 ρ^=⨁NpNρ^Ncan\hat\rho=\bigoplus_Np_N\hat\rho_N^{\mathrm{can}} について Ω[ρ^]=∑NpN(FN−μN)+kBT∑NpNln⁡pN\Omega[\hat\rho]=\sum_Np_N(F_N-\mu N)+ k_{\mathrm B} T\sum_Np_N\ln p_N(FN=−kBTln⁡ZNF_N=- k_{\mathrm B} T\ln Z_N)となり、これは確率 {pN}\{p_N\} の上の Gibbs の変分原理(古典版)で、pN∝e−β(FN−μN)=zNZNp_N\propto\mathrm{e}^{-\beta(F_N-\mu N)}=z^NZ_N がただ1つの最小点であることから従う。

(i) で NN を1つに固定した場合が第2章の正準の分配関数 ZN±Z_N^\pm で、(ii) は「正準の状態を粒子数について混ぜると大正準になる」ことである。相互作用のある場合も命題はそのまま成り立つ([H^, N^]=0\left[\hat H,\,\hat N\right]=0 しか使っていない)。相互作用が無いときだけ、定理 6.5.3 によって大正準の側が積に分かれ、計算が簡単になる。

同じ分布の4つの出し方

Bose 分布と Fermi 分布は、この巻のいくつかの部で別の道具から出てくる。並べると次のとおりである。

  • 第4部(密度行列):第4部第4章は1つのモードの振動子の e−βH^/Z\mathrm{e}^{-\beta\hat H}/Z の固有値が等比数列であることから ⟨n⟩=1/(eβℏω−1)\langle n \rangle =1/(\mathrm{e}^{\beta\hbar\omega}-1) を出した。この章の (6.5.11) はそれを μ=0\mu=0 の Bose 分布として読み直したもので、命題 6.5.6 の (i) で NN を量子の個数と読む場合に当たる。
  • 第6部(この章):Fock 空間の指数法則で Ξ\Xi を積に分け、(6.5.8) を1行で出した。
  • 第3部・解析力学の巻(経路積分):循環展開 (6.5.9) の Z1(ℓβ)Z_1(\ell\beta) は、虚時間 ℓβℏ\ell\beta\hbar の閉じた経路の経路積分で、粒子の入れ替えが巻き数 ℓ\ell の経路として数えられる(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第1章、虚時間の経路積分の一般の形は 第3部第6章)。
  • 第8部(代数):KMS 条件 ω(A^ αiβℏ(B^))=ω(B^A^)\omega(\hat A\,\alpha_{\mathrm{i}\beta\hbar}(\hat B))=\omega(\hat B\hat A) に A^=a^†\hat A=\hat a^\dagger、B^=a^\hat B=\hat a を入れ、H^−μN^\hat H-\mu\hat N による時間発展 αt(a^)=e−i(ε−μ)t/ℏa^\alpha_t(\hat a)=\mathrm{e}^{-\mathrm{i}(\varepsilon -\mu)t/\hbar}\hat a を使うと

eβ(ε−μ)⟨a^†a^⟩=⟨a^a^†⟩=1±⟨a^†a^⟩(6.5.23)\mathrm{e}^{\beta(\varepsilon -\mu)}\langle \hat a^\dagger\hat a \rangle =\langle \hat a\hat a^\dagger \rangle =1\pm\langle \hat a^\dagger\hat a \rangle\tag{6.5.23}

で、解いて (6.5.8) になる(第8部第4章)。右の等号が交換関係か反交換関係かの違いで、トレースを使わないのでモードが無限個の系でも使える。

4つの道具は、状態を何で特定するかが違う。第4部は固有値、この章は Fock 空間の積の構造、経路積分は閉じた経路、第8部は状態と時間発展の関係(KMS)である。同じ分布が出るのは、どれも同じ e−β(H^−μN^)\mathrm{e}^{-\beta(\hat H-\mu\hat N)} を別の言葉で書いたものだからである。

学部の統計力学の書き方との対応

学部の統計力学の授業では、理想量子気体を「1粒子状態 α\alpha にいる粒子の数 nαn_\alpha の組 {nα}\{n_\alpha\} で多粒子の状態を指定する。ボースは nα=0,1,2,…n_\alpha=0,1,2,\dots、フェルミは nα=0,1n_\alpha=0,1」という数え方の規則から始め、

Ξ=∑{nα}exp⁡[−β∑α(εα−μ)nα]=∏α∑nαe−β(εα−μ)nα\Xi=\sum_{\{n_\alpha\}}\exp\Bigl[-\beta\sum_\alpha(\varepsilon _\alpha-\mu)n_\alpha\Bigr]=\prod_\alpha\sum_{n_\alpha}\mathrm{e}^{-\beta(\varepsilon _\alpha-\mu)n_\alpha}

と和を積に入れ替えて分布を出す。この章との対応は表 6.5.1 のとおりである。授業で「数え方の規則」として与えられるものは、第2章で証明した占有数の基底の存在(対称化の要請から出る)で、和と積の入れ替えはこの章の補題 6.5.2 である。

表 6.5.1 理想量子気体の書き方の対応
学部の統計力学の書き方この章(第二量子化)の書き方
多粒子の状態は占有数の組 {nα}\{n_\alpha\} で指定するFock 空間の占有数の基底 ∣n1,…,nM⟩| n_1,\dots,n_M \rangle(第6部第2章)
ボースは nα≤∞n_\alpha\le\infty、フェルミは nα≤1n_\alpha\le1交換関係と反交換関係、c^2=0\hat c^2=0(第6部第3章)
Ξ=∑{n}e−β∑(ε−μ)n\Xi=\sum_{\{n\}}\mathrm{e}^{-\beta\sum(\varepsilon -\mu)n}Ξ=Tr⁡F±e−β(H^−μN^)\Xi=\operatorname{Tr}_{\mathcal F_\pm}\mathrm{e}^{-\beta(\hat H-\mu\hat N)} (6.5.1)
和と積の入れ替えFock 空間の指数法則(補題 6.5.2)
nˉα=1/(eβ(εα−μ)∓1)\bar n_\alpha=1/(\mathrm{e}^{\beta(\varepsilon _\alpha-\mu)}\mp1)定理 6.5.3、または KMS (6.5.23)
光子・フォノンは μ=0\mu=0N^\hat N が保存しないので Lagrange 乗数が無い(6.5.3 節)
正準と大正準は熱力学極限で同じ命題 6.5.6。凝縮体の揺らぎでは一致しない(6.5.4 節)
図

図 6.5.4 この章の橋。Fock 空間の大正準の状態は、粒子数で切ると基準の正準の状態になり、自由な場合は指数法則で Bose・Fermi 分布に分かれる。同じ分布が経路積分の輪の和と、代数の KMS 条件からも出る。

例題 6.5.6 2粒子の正準を大正準から取り出す ★★

オリジナル1次元の調和ポテンシャル(εj=ℏω(j+12)\varepsilon _j=\hbar\omega(j+\frac12))に同種粒子が入っている。x=βℏω=1x=\beta\hbar\omega=1 とする。

  1. (1) 循環展開 (6.5.9) から Ξ\Xi の z2z^2 の係数を取り出し、Z2±Z_2^\pm の値を出せ。
  2. (2) q=e−xq=\mathrm{e}^{-x} として、第2章の閉じた形 Z2+=q/((1−q)2(1+q))Z_2^+=q/((1-q)^2(1+q))、Z2−=q2/((1−q)2(1+q))Z_2^-=q^2/((1-q)^2(1+q)) と一致することを確かめよ。
  3. (3) 2粒子の占有数の組を直接数えて同じ値を出せ。
解答

(1) Z1(β)=1/(2sinh⁡(1/2))=0.9595Z_1(\beta)=1/(2\sinh(1/2))=0.9595、Z1(2β)=1/(2sinh⁡1)=0.4255Z_1(2\beta)=1/(2\sinh1)=0.4255 である。命題 6.5.4 からZ2+=12(0.95952+0.4255)=0.6731Z_2^+=\frac12(0.9595^2+0.4255)=0.6731、Z2−=12(0.95952−0.4255)=0.2476Z_2^-=\frac12(0.9595^2-0.4255)=0.2476 になる。

(2) q=e−1=0.3679q=\mathrm{e}^{-1}=0.3679 で q/((1−q)2(1+q))=0.3679/(0.3996×1.3679)=0.6731q/((1-q)^2(1+q))=0.3679/(0.3996\times1.3679)=0.6731、q2/(… )=0.2476q^2/(\dots)=0.2476 で一致する。式としても Z1(β)=q1/2/(1−q)Z_1(\beta)=q^{1/2}/(1-q)、Z1(2β)=q/(1−q2)Z_1(2\beta)=q/(1-q^2) を入れると 12[q/(1−q)2±q/((1−q)(1+q))]\frac12[q/(1-q)^2\pm q/((1-q)(1+q))] を通分して第2章の形になる。

(3) 2粒子の状態は2つの準位 i≤ji\le j(ボース)または i<ji<j(フェルミ)の組で、エネルギーは ℏω(i+j+1)\hbar\omega(i+j+1) である。∑i≤je−(i+j+1)=0.6731\sum_{i\le j}\mathrm{e}^{-(i+j+1)}=0.6731、∑i<je−(i+j+1)=0.2476\sum_{i<j}\mathrm{e}^{-(i+j+1)}=0.2476 を数値で数えて一致した(verify_ch6-05.py)。大正準の状態から粒子数 2 の部分を切り出すと、命題 6.5.6 の (i) のとおり、確率 z2Z2±/Ξz^2Z_2^\pm/\Xi の重みで正準の状態が現れる。

木下の勉強ステータス

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