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橋:古典極限の3つの見方

2026年10月17日15分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第2章 ℏ→0 で Hamilton–Jacobi へ:流体から見た古典極限
目次
  1. 地図の上の位置
  2. 第5部の言葉で:単一運動量の分布の Liouville 方程式
  3. 第3部の言葉で:停留位相と Van Vleck の密度
  4. 基準と授業の形:Ehrenfest の定理と WKB
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第7部 第2章 §7.2.5 ★★★ 流体の古典極限を、位相空間の Liouville 方程式(第5部)・経路積分の停留位相(第3部)・基準の Ehrenfest の定理と並べ、単一運動量の分布の Liouville 方程式が (7.2.2) と同値であることを両向きに証明する

地図の上の位置

計画の同値性の地図(第1部第1章)で、この章は「流体 ↔ 解析力学」の橋を受け持つ。向きは2つある。流体から解析力学へは、QQ を無視すると量子 HJ 方程式が古典の Hamilton–Jacobi 方程式になり、その特性曲線が Hamilton 方程式の解になる(命題 7.2.2)。解析力学から流体(ひいては基準)へは、古典の Hamilton–Jacobi 方程式と連続の式の解から ψcl=ρ eiS/ℏ\psi_{\mathrm{cl}}=\sqrt\rho\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} を作ると、Schrödinger 方程式の残差が −Qψcl-Q\psi_{\mathrm{cl}} になり、本物の解との差が (7.2.6) で O(ℏt)\mathcal{O}(\hbar t) に抑えられる(命題 7.2.1)。ただしこの向きは近似の向きで、焦点より前の時刻に限られる。同じ古典極限を、ほかの部はそれぞれの言葉で出している。図 7.2.3 に3つを並べる。

図

図 7.2.3 古典極限の3つの見方。上段がそれぞれの構成、下段(灰色)が ℏ→0\hbar\to0 の極限で現れる古典の式。下段どうしを結ぶ橋はこの節で示す。(a) 1本の軌道の ∣K∣2\lvert K\rvert ^2 が古典粒子の集団の密度に等しい(例題 7.2.5)。(b) 単一運動量の分布の Liouville 方程式が流体の古典極限と同値(定理 7.2.3)。

第5部の言葉で:単一運動量の分布の Liouville 方程式

第5部第3章(第5部第3章)では、Wigner 関数の Moyal 方程式 ∂tW={{H,W}}\partial_tW=\{\{H,W\}\} が ℏ\hbar の2乗の項を無視すると古典の Liouville 方程式 ∂tf={H,f}\partial_tf=\{H,f\} になることを示す(H=p2/2m+VH=p^2/2m+V では、無視するのは VV の3階以上の微分を含む項である)。ここで f(x,p,t)f(x,p,t) は相空間の古典の分布である。Liouville 方程式は運動量に広がりを持つ一般の分布を運ぶので、(7.2.2) より多くを含む。両者の関係は次の定理にまとめられる。1次元で書くが、多次元でも同じである。

定理 7.2.3(単一運動量の分布 ★★★)

ρ(x,t)>0\rho(x,t)>0 と u(x,t)u(x,t) を滑らかな関数とし、相空間の分布を

f(x,p,t)=ρ(x,t) δ(p−u(x,t))(7.2.15)f(x,p,t)=\rho(x,t)\,\delta\bigl(p-u(x,t)\bigr)\tag{7.2.15}

と置く。ff が Liouville 方程式 ∂tf+pm∂xf−V′(x) ∂pf=0\partial_tf+\frac pm\partial_xf-V'(x)\,\partial_pf=0 を(超関数の意味で)満たすことと、

∂ρ∂t+∂∂x(ρum)=0,∂u∂t+um∂u∂x+V′(x)=0(7.2.16)\frac{\partial \rho}{\partial t}+\frac{\partial }{\partial x}\Bigl(\frac{\rho u}{m}\Bigr)=0,\qquad \frac{\partial u}{\partial t}+\frac{u}{m}\frac{\partial u}{\partial x}+V'(x)=0\tag{7.2.16}

が両方成り立つことは同値である。u=∂xSu=\partial_xS と置けば、(7.2.16) は (7.2.2) の連続の式と、Hamilton–Jacobi 方程式の xx 微分である。

証明

(x,p)(x,p) の滑らかで台がコンパクトな試験関数 φ\varphi を掛けて pp で積分する。Φ(x,t)=φ(x,u(x,t))\Phi(x,t)=\varphi(x,u(x,t))、Φx=∂xφ(x,u)\Phi_x=\partial_x\varphi(x,u)、Φp=∂pφ(x,u)\Phi_p=\partial_p\varphi(x,u) と書く(Φx\Phi_x は1つ目の引数だけについての偏微分で、∂xΦ=Φx+Φp ∂xu\partial_x\Phi=\Phi_x+\Phi_p\,\partial_xu である)。デルタ関数の性質と部分積分から、3つの項はそれぞれ

∫φ ∂tf dp=∂t(ρΦ),∫φ pm∂xf dp=∂x(ρuΦm)−ρumΦx,−∫φ V′∂pf dp=V′ρ Φp\int\varphi\,\partial_tf\,\mathrm{d} p=\partial_t(\rho\Phi),\quad \int\varphi\,\frac pm\partial_xf\,\mathrm{d} p=\partial_x\Bigl(\frac{\rho u\Phi}{m}\Bigr)-\frac{\rho u}{m}\Phi_x,\quad -\int\varphi\,V'\partial_pf\,\mathrm{d} p=V'\rho\,\Phi_p

になる。∂t(ρΦ)=Φ ∂tρ+ρΦp ∂tu\partial_t(\rho\Phi)=\Phi\,\partial_t\rho+\rho\Phi_p\,\partial_tu と∂x(ρuΦ/m)=Φ ∂x(ρu)/m+(ρu/m)(Φx+Φp ∂xu)\partial_x(\rho u\Phi/m)=\Phi\,\partial_x(\rho u)/m+(\rho u/m)(\Phi_x+\Phi_p\,\partial_xu) を入れて整理すると、Φx\Phi_x の項は打ち消し合い、3つの和は各点 xx で

∫φ (∂tf+pm∂xf−V′∂pf)dp=Φ[∂tρ+∂x(ρum)]+ρ Φp[∂tu+um∂xu+V′]\int\varphi\,\Bigl(\partial_tf+\frac pm\partial_xf-V'\partial_pf\Bigr)\mathrm{d} p =\Phi\Bigl[\partial_t\rho+\partial_x\Bigl(\frac{\rho u}{m}\Bigr)\Bigr]+\rho\,\Phi_p\Bigl[\partial_tu+\frac{u}{m}\partial_xu+V'\Bigr]

に等しい(この恒等式は具体の φ\varphi で検算した)。よって Liouville 方程式が超関数の意味で成り立つことは

∫dx {Φ [連続の式]+ρ Φp [Euler]}=0(すべての φ とすべての t)\int\mathrm{d} x\,\Bigl\{\Phi\,[\text{連続の式}]+\rho\,\Phi_p\,[\text{Euler}]\Bigr\}=0\qquad(\text{すべての }\varphi\text{ とすべての }t)

と同値である(時刻ごとに (x,p)(x,p) の超関数として見る)。時刻 t∗t_* を固定し、a(x)a(x), b(x)b(x) を台がコンパクトな滑らかな関数としてφ(x,p)=[a(x)+(p−u(x,t∗)) b(x)]χ(p−u(x,t∗))\varphi(x,p)=\bigl[a(x)+(p-u(x,t_*))\,b(x)\bigr]\chi\bigl(p-u(x,t_*)\bigr)(χ\chi は 00 の近くで 11 になる切り無視し)と選ぶと、その時刻で Φ=a\Phi=a、Φp=b\Phi_p=b になり、aa と bb は独立に選べる。ρ>0\rho>0 なので、上の式がすべての a,ba,b について成り立つことは、2つの括弧が各点で 00 であることと同値である。逆向きは、2つの括弧が 00 なら被積分関数が 00 なので明らかである。

この定理から、2つの古典極限の関係が読める。純粋状態 ψ=ρ eiS/ℏ\psi=\sqrt\rho\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} の Wigner 関数を各点 xx で pp の分布として見ると、平均は ∂xS\partial_xS、分散は量子応力に比例する ℏ2\hbar^2 の桁の量である(前の章の Wigner 関数のモーメントの式)。ρ\rho と SS を固定して ℏ→0\hbar\to0 とすると、分散が 00 になり、WW は (7.2.15) の形の単一運動量の分布 ρ δ(p−∂xS)\rho\,\delta(p-\partial_xS) に近づく。そして単一運動量の分布の Liouville 方程式は、定理 7.2.3 により流体の古典極限 (7.2.2) と同じである。したがって「Moyal から ℏ2\hbar^2 の項を無視する」と「Madelung から QQ を無視する」は、滑らかな純粋状態については同じ古典の流れになる。違いは混合状態と焦点の扱いにある。Liouville 方程式は運動量に広がりのある分布も運べるので、焦点を過ぎて多価になった流れも1つの ff として書ける。流体の2本の式はそれができない。

第3部の言葉で:停留位相と Van Vleck の密度

第3部第4章(第3部第4章)は、伝播関数の経路積分を停留位相で評価して、ℏ→0\hbar\to0 で

K(x,t;x0,0)≈∑古典軌道12πiℏ∣∂2Scl∂x ∂x0∣1/2exp⁡(iℏScl(x,t;x0)−iπ2ν)(7.2.17)K(x,t;x_0,0)\approx\sum_{\text{古典軌道}}\frac{1}{\sqrt{2\pi\mathrm{i}\hbar}}\Bigl\lvert\frac{\partial^2S_{\mathrm{cl}}}{\partial x\,\partial x_0}\Bigr\rvert^{1/2}\exp\Bigl(\frac{\mathrm{i}}{\hbar}S_{\mathrm{cl}}(x,t;x_0)-\frac{\mathrm{i}\pi}{2}\nu\Bigr)\tag{7.2.17}

を出す。和は x0x_0 から時刻 tt に xx へ着く古典軌道について取り、ν\nu はその軌道が途中で通った焦点の数である。この形は J. H. Van Vleck(1928)が古典の確率と対応させる目的で導いた1J. H. Van Vleck (1928), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 14, 178–188.下の脚注へ。軌道が1本のとき、∣K∣2\lvert K\rvert ^2 は前因子の2乗 12πℏ∣∂2Scl/∂x∂x0∣\frac{1}{2\pi\hbar}\lvert \partial^2S_{\mathrm{cl}}/\partial x\partial x_0\rvert である。∂Scl/∂x0=−p0\partial S_{\mathrm{cl}}/\partial x_0=-p_0 なので、これは12πℏ∣∂p0/∂x∣\frac{1}{2\pi\hbar}\lvert \partial p_0/\partial x\rvert、つまり「点 x0x_0 から運動量について一様な密度 1/(2πℏ)1/(2\pi\hbar) で出発した古典粒子の集団が、時刻 tt に作る位置の密度」になっている。(7.2.9) の Jacobi 行列式の式で、初めの変数を位置でなく運動量に取ったものである。

軌道が2本以上あると、(7.2.17) は各軌道の寄与を位相 Scl/ℏS_{\mathrm{cl}}/\hbar と焦点ごとの −π/2-\pi/2 を付けて足す。流体の2本の式に欠けていた「焦点を過ぎた先の多価の流れを位相つきで重ねる処方」は、ここにある。前因子の行列式は焦点で発散するので、焦点のすぐ近くでは (7.2.17) も使えず、Airy 関数などの一様な近似が要る(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第7章)。3つの見方は、どれも同じ古典軌道の族を使っているので、同じ点で崩れる。

例題 7.2.5 自由粒子の点源で、Van Vleck の密度と古典の密度を比べる ★★

オリジナル1次元の自由粒子の伝播関数 K=m/(2πiℏt)exp⁡(im(x−x0)2/(2ℏt))K=\sqrt{m/(2\pi\mathrm{i}\hbar t)}\exp(\mathrm{i} m(x-x_0)^2/(2\hbar t))(共通例題③。第3部第3章)について答えよ。

  1. 古典作用 Scl=m(x−x0)2/(2t)S_{\mathrm{cl}}=m(x-x_0)^2/(2t) から ∂2Scl/∂x∂x0\partial^2S_{\mathrm{cl}}/\partial x\partial x_0 を求め、(7.2.17) が厳密な KK と一致することを確かめよ。
  2. ∣K∣2\lvert K\rvert ^2 を求めよ。
  3. 点 x0x_0 から、運動量 p0p_0 について一様な密度 1/(2πℏ)1/(2\pi\hbar) で古典粒子を出す。時刻 tt の位置の密度を求め、(2) と比べよ。
解答

(1) ∂Scl/∂x0=−m(x−x0)/t\partial S_{\mathrm{cl}}/\partial x_0=-m(x-x_0)/t を xx で微分して ∂2Scl/∂x∂x0=−m/t\partial^2S_{\mathrm{cl}}/\partial x\partial x_0=-m/t である。軌道は1本で焦点を通らない(ν=0\nu=0)ので、(7.2.17) は (2πiℏ)−1/2(m/t)1/2eiScl/ℏ=m/(2πiℏt) eim(x−x0)2/(2ℏt)(2\pi\mathrm{i}\hbar)^{-1/2}(m/t)^{1/2}\mathrm{e}^{\mathrm{i} S_{\mathrm{cl}}/\hbar}=\sqrt{m/(2\pi\mathrm{i}\hbar t)}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} m(x-x_0)^2/(2\hbar t)} で、厳密な KK と同じである。自由粒子では停留位相が厳密になる。

(2) ∣1/i∣2=1\lvert \sqrt{1/\mathrm{i}}\rvert ^2=1 なので ∣K∣2=m/(2πℏt)\lvert K\rvert ^2=m/(2\pi\hbar t) で、xx によらない。

(3) 運動量 p0p_0 の粒子は時刻 tt に x=x0+p0t/mx=x_0+p_0t/m にいるので、p0=m(x−x0)/tp_0=m(x-x_0)/t、dp0/dx=m/t\mathrm{d} p_0/\mathrm{d} x=m/t である。位置の密度は12πℏ∣dp0/dx∣=m/(2πℏt)\frac{1}{2\pi\hbar}\lvert \mathrm{d} p_0/\mathrm{d} x\rvert =m/(2\pi\hbar t) で、(2) と一致する。古典の集団は時間とともに広がり、密度が 1/t1/t で薄まる。これは (7.2.9) で J=∂x/∂p0=t/mJ=\partial x/\partial p_0=t/m としたものである。

基準と授業の形:Ehrenfest の定理と WKB

基準(第1部)の言葉で古典極限を言うのは Ehrenfest の定理である。Heisenberg の運動方程式(第2部第3章)の期待値を取ると

ddt⟨x^⟩=⟨p^⟩m,ddt⟨p^⟩=−⟨V′(x^)⟩(7.2.18)\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\langle \hat x \rangle =\frac{\langle \hat p \rangle }{m},\qquad \frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\langle \hat p \rangle =-\langle V'(\hat x) \rangle\tag{7.2.18}

で、これは学部の授業でも習う形である。流体の言葉では、運動量の期待値 ∫ρ mv dx\int\rho\,mv\,\mathrm{d} x の時間変化は量子 Euler 方程式を積分したもので、量子ポテンシャルの力の寄与は −∫ρ ∂xQ dx-\int\rho\,\partial_xQ\,\mathrm{d} x である。ρ ∂xQ\rho\,\partial_xQ は量子応力の発散(前の章の命題)なので、全空間で積分すると 00 になる(ずらしたガウス分布で検算した)。つまり QQ は重心の運動に現れず、(7.2.18) が古典の形 ddt⟨p^⟩=−V′(⟨x^⟩)\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\langle \hat p \rangle =-V'(\langle \hat x \rangle ) から外れるのは、⟨V′(x^)⟩\langle V'(\hat x) \rangle と V′(⟨x^⟩)V'(\langle \hat x \rangle ) の差、つまり波束の広がりの中で V′V' が変わることだけによる。QQ の無視は、重心でなく流れの形に関わる近似である。

WKB 近似は授業では ψ≈Cpexp⁡(±iℏ∫p dx)\psi\approx\frac{C}{\sqrt p}\exp\bigl(\pm\frac{\mathrm{i}}\hbar\int p\,\mathrm{d} x\bigr) と、条件 ∣dλ/dx∣≪1\lvert \mathrm{d}\lambda/\mathrm{d} x\rvert \ll1 の組で習う。第3節で見たとおり、前者は (7.2.10) と (7.2.11) の解を極形式に戻したもの、後者は無視した量子ポテンシャル (7.2.12) が運動エネルギーに比べて小さいという条件である。

表 7.2.1 古典極限の4つの言い方。上の3つは焦点で同時に崩れる。
見方ℏ→0\hbar\to0 で無視するもの残る古典の式崩れる所
流体(この章)量子ポテンシャル QQHJ 方程式+連続の式ρ\rho の発散・定在波
位相空間(第5部)Moyal 括弧の ℏ2\hbar^2 の項Liouville 方程式干渉の縞(W<0W<0)
経路積分(第3部)停留点のまわりの高次古典軌道+Van Vleck前因子の発散
基準(Ehrenfest)⟨V′(x^)⟩−V′(⟨x^⟩)\langle V'(\hat x) \rangle -V'(\langle \hat x \rangle )Newton の式(重心)波束の広がり

1 J. H. Van Vleck (1928), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 14, 178–188.

木下の勉強ステータス

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