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何を削ったか・何の実験の量で確かめるか

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第4章 Bloch の定理
目次
  1. 削ったもの
  2. 何の実験の量で確かめるか
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第4章 §2.4.5 ★★ 定理そのものは厳密。削ったのは電子どうしの相互作用・原子核の運動・乱れで、どれを戻しても全体の結晶運動量は残る。ARPES がバンドを直接測る

削ったもの

Bloch の定理は、選んだ H^\hat H が周期ポテンシャルの中の1電子の H^\hat H である限り、近似を含まない。近似はすべて、実在の結晶からこの H^\hat H を選んだ段階にある。第1部第1章で全体のハミルトニアンから1電子の H^\hat H へ降りてきた道を逆にたどり、削ったものを戻したときに定理のどこが残りどこが壊れるかを確かめる。

1つめは電子どうしの相互作用である。V(r)V(\bm{r}) の中には、ほかの電子が平均として作るポテンシャル(Hartree の項と、交換・相関の項)が入っている。この平均のポテンシャルが格子の周期を持つと仮定することで、1電子の問題になった。相互作用を正確に戻しても、すべての電子を同時に R\bm{R} だけずらす並進T^Rtot\hat T^{\mathrm{tot}}_{\bm{R}} は、原子核を止めたままの電子全体の H^\hat H と交換する(Coulomb 相互作用は電子どうしの距離だけによる)。したがって、多電子状態は全体の結晶運動量 K\bm{K}(逆格子ベクトルを法として)で番号付けられ、式 (2.4.12) の形の選択則も残る。壊れるのは「1電子ごとに εn(k)\varepsilon _n(\bm{k}) が厳密な固有値になる」という描像のほうで、相互作用があると1電子の励起は有限の寿命を持つ準粒子になる(第5部第1章)。

2つめは原子核の運動である。原子核が振動すると、電子だけをずらす並進は H^\hat H と交換しない。電子と原子核の両方を同時にずらす並進は交換するので、電子の結晶運動量とフォノンの結晶運動量の和が保存し、電子がフォノンを放出・吸収するたびに k\bm{k} が式 (2.4.12) の形で変わる。これが電気抵抗の主な原因の1つになる(第4部)。

3つめは乱れ(不純物・空孔・合金の組成の揺らぎ)である。乱れは並進の対称性そのものを壊すので、k\bm{k} はよい量子数でなくなる。乱れが弱いうちは、Bloch 状態が時々散乱される描像(緩和時間)で扱えるが、強い乱れのもとでは状態が空間的に局在しうる(P. W. Anderson(1958)1P. W. Anderson (1958), Phys. Rev. 109, 1492.下の脚注へ の局在)。さらに、磁場がかかるとベクトルポテンシャルが格子の周期を持たなくなるので、並進は位相をつけた「磁気並進」に置き換わる(第4部第4章)。

平均場のポテンシャルを決める近似(Hartree–Fock は A 型、密度汎関数の交換相関は C 型)の札は第1部第1章に、原子核を止める近似と周期境界条件の札は第1部第2章に置いた。この章で新しく使った近似は、中心方程式 (2.4.10) の平面波を有限個で打ち切ったことである。打ち切りは H^k\hat H_{\bm{k}} を有限次元の部分空間へ射影する A 型の近似で、Rayleigh–Ritz の原理から、得られる固有値は真の値の上界になり、平面波を足すたびに単調に下がる。図 2.4.1 の模型の ka=π/2ka=\pi/2 の最低固有値は、∣m∣≤1,2,3\lvert m\rvert \le1,2,3 で 0.1914250.191425、0.19125930.1912593、0.191259280.19125928 と下がり、∣m∣≤3\lvert m\rvert \le3 で ∣m∣≤12\lvert m\rvert \le12 との差が 10−1110^{-11} 以下になった。余弦ポテンシャルは滑らかなので収束が速い。原子核の近くで −Ze2/(4πε0r)-Ze^2/(4\pi\varepsilon _0r) のように発散するポテンシャルでは、unku_{n\bm{k}} が尖り、平面波の数を大きく増やしても収束が遅い。実際の計算で内殻を擬ポテンシャルに置き換えるのはこのためである。

近似の裏付け

型 C(閉じる) | 小さいもの ほかの電子の作る平均のポテンシャルを、格子の周期を持つ1電子のポテンシャル V(r)V(\bm{r}) に置き換える(交換相関の部分に小さいパラメータなし) | 証明 C 型=内部の評価なし(Hartree–Fock の部分は A 型で、その変分構造は第V巻第5章) | 行き先 近似の数理 第9章・近似の数理 第5章

近似の裏付け

型 A(射影) | 小さいもの ∣G∣≤Gmax⁡\lvert \bm{G}\rvert \le G_{\max} の平面波 ei(k+G)⋅r\mathrm{e}^{\mathrm{i}(\bm{k}+\bm{G})\cdot\bm{r}} の張る部分空間 | 証明 証明済み(各 k\bm{k} で Rayleigh–Ritz の上界と、基底を足すたびの単調な減少。収束の速さは VV の滑らかさで決まる) | 行き先 近似の数理 第4章・近似の数理 第12章

何の実験の量で確かめるか

バンド εn(k)\varepsilon _n(\bm{k}) をもっとも直接に測るのは、角度分解光電子分光(ARPES)である。エネルギー ℏω\hbar\omega の光を結晶の表面に当て、飛び出した電子の運動エネルギー EkinE_{\mathrm{kin}} と角度 θ\theta を測る。エネルギーの保存から、電子が結晶の中で持っていたエネルギーは ℏω\hbar\omega から EkinE_{\mathrm{kin}} と仕事関数 ϕW\phi_{\mathrm W}(記号は記法の正本に無い。静電ポテンシャルとの区別のため添字を付けた)を引いたものとして決まる。表面に平行な方向には結晶の並進の対称性が残っているので、表面に平行な結晶運動量は、式 (2.4.12) と同じ議論で表面の逆格子ベクトルを法として保存する:

ℏk∥=2mEkin sin⁡θ(modℏG∥).(2.4.15)\hbar k_\parallel=\sqrt{2mE_{\mathrm{kin}}}\,\sin\theta\pmod{\hbar G_\parallel}.\tag{2.4.15}

表面に垂直な成分は表面で対称性が切れているので保存せず、別の仮定が要る。角度を振りながら EkinE_{\mathrm{kin}} の山の位置を追うと、εn\varepsilon _n を k∥k_\parallel の関数として描くことができる。バンドの傾きが速度を与えるという定理 2.4.3 は、伝導の実験(第4部)で間接的に確かめることができる。

例題 2.4.6 ARPES の角度から結晶運動量を読む ★★

オリジナル光子のエネルギー 21.2 eV21.2\,\mathrm{eV} の光で、仕事関数 4.5 eV4.5\,\mathrm{eV} の結晶から Fermi 準位の電子を叩き出す(結合エネルギー 00)。表面は格子定数 a=0.36 nma=0.36\,\mathrm{nm} の正方格子とする。

  1. (1) 飛び出す電子の運動エネルギーと、θ=30∘\theta=30^\circ で検出したときの k∥k_\parallel を求めよ。
  2. (2) それは第1 Brillouin 域(∣k∥∣≤π/a\lvert k_\parallel\rvert \le\pi/a、片方の軸の向き)の中にあるか。なければ域の中の代表を答えよ。
  3. (3) 域の端 k∥=π/ak_\parallel=\pi/a に届く検出角を求めよ。
解答

(1) Ekin=21.2−4.5=16.7 eVE_{\mathrm{kin}}=21.2-4.5=16.7\,\mathrm{eV} である。2mEkin/ℏ=2×9.109×10−31×16.7×1.602×10−19/(1.0546×10−34)=2.094×1010 m−1\sqrt{2mE_{\mathrm{kin}}}/\hbar=\sqrt{2\times9.109\times10^{-31}\times16.7\times1.602\times10^{-19}}/(1.0546\times10^{-34})=2.094\times10^{10}\,\mathrm{m^{-1}} なので、k∥=2.094×1010×sin⁡30∘=1.047×1010 m−1k_\parallel=2.094\times10^{10}\times\sin30^\circ=1.047\times10^{10}\,\mathrm{m^{-1}} である。

(2) π/a=8.73×109 m−1\pi/a=8.73\times10^{9}\,\mathrm{m^{-1}} で、k∥/(π/a)=1.20k_\parallel/(\pi/a)=1.20 なので第1 Brillouin 域の外(第2 Brillouin 域)にある。逆格子ベクトル 2π/a=1.745×1010 m−12\pi/a=1.745\times10^{10}\,\mathrm{m^{-1}} を引くとk∥−2π/a=−6.98×109 m−1k_\parallel-2\pi/a=-6.98\times10^{9}\,\mathrm{m^{-1}} で、これが域の中の代表である。結晶運動量は G\bm{G} を法としてしか決まらないので、測った k∥k_\parallel をこのように折り返してバンド図と比べる。

(3) sin⁡θ=(π/a)/(2.094×1010)=0.4167\sin\theta=(\pi/a)/(2.094\times10^{10})=0.4167 から θ=24.6∘\theta=24.6^\circ である。光子のエネルギーが小さいと EkinE_{\mathrm{kin}} が小さく、域の端の k∥k_\parallel を測るには大きな角度が要る。

1 P. W. Anderson (1958), Phys. Rev. 109, 1492.

木下の勉強ステータス

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