解答
(1) e^=(c^eiφ/2+d^e−iφ/2)/2 に c^、d^ を入れると e^=a^cos(φ/2)+ib^sin(φ/2)、同じく f^=ia^sin(φ/2)+b^cos(φ/2) である。e^†e^=a^†a^cos22φ+b^†b^sin22φ+isin2φcos2φ(a^†b^−b^†a^)、f^†f^ は cos と sin を入れ替えて交差項の符号を変えたものなので、差は(a^†a^−b^†b^)cosφ+isinφ(a^†b^−b^†a^) になる。入口 b^ が真空なら ⟨b^†b^⟩=0、⟨b^⟩=0 で交差項の期待値も 0 なので、⟨N^⟩=∣α∣2cosφ=Ncosφ。第9章の干渉縞の式を、光子数の差の期待値として書いたものである。
(2) a^→α とすると交差項は iαsinφ(b^−b^†)=iαsinφ⋅2iX^2(b)=−2αsinφX^2(b) で、b^†b^ を捨てると N^≈Ncosφ−2αsinφX^2(b) である。φ=π/2 では cosφ の項に掛かる a^ の光子数の揺らぎが消え、ΔN=2αΔX2(b)、∣d⟨N^⟩/dφ∣=N なので
Δφ=N2αΔX2(b)=N2ΔX2(b).
真空なら ΔX2(b)=21 で Δφ=1/N である。干渉計の雑音は、使っていない入口から入る真空の揺らぎで決まる。位相を付ける操作は exp[iφ(c^†c^−d^†d^)/2] で、生成子 G^=(c^†c^−d^†d^)/2 の分散は、腕の光がそれぞれ平均 N/2 のコヒーレント状態なので (N/2+N/2)/4=N/4。JQ=4(ΔG)2=N で、量子 Cramér–Rao の下限 1/JQ=1/N と一致する。コヒーレント状態の光と真空の組では、この測り方が最良で、これが相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部第8章の標準量子限界である。
(3) スクイーズド真空では ΔX2(b)=e−r/2 なので、(2) の式から Δφ=e−r/N。入れる光子数を増やさずに、誤差が e−r 倍になる。厳密な分散 Ne−2r+sinh2r の2項目は、スクイーズド真空の光子そのものの揺らぎである。r が大きいとき sinh2r≈e2r/4 なので、Ne−2r+e2r/4 を最小にして e4r=4N、すなわち e2r=2N。このとき分散は N/2+N/2=N で、傾きは N−sinh2r≈N なので Δφ≈N1/4/N=N−3/4 である。スクイーズした光子の数 sinh2r≈N/2 は N に比べてごくわずかで、標準量子限界 N−1/2 を越えて N−3/4 まで下がる。
(4) 光子数は N=Pτλ/(hc)=1×10−2×1064×10−9/(1.986×10−25)=5.36×1016 で、Δφ=1/N=4.32×10−9rad、ΔL=1064×10−9×4.32×10−9/(4π)=3.66×10−16m である。例題 31.5 (1) から、η=0.9 で入るスクイーズは分散の比 0.128(8.91dB)で、Δφ は 0.128=0.358 倍、ΔL=1.31×10−16m になる。同じ精度をスクイーズなしで得るには N を 1/0.128=7.78 倍、すなわち出力 7.78W が要る。ひずみは 1.31×10−16/(4×103)=3.3×10−20 である。実際の検出器は腕に共振器を置いて光を何百回も往復させ、出力も桁違いに大きいので、この素朴な見積もりよりはるかに小さいひずみを測る(第2部第18章の 10−21)。それでも、出力を上げるのが難しい所で、効率 0.9 の 8.9dB のスクイーズは出力を約8倍にするのと同じ得になる。
(5) c^†c^−d^†d^=21[(a^†+b^†)(a^+b^)−(a^†−b^†)(a^−b^)]=a^†b^+b^†a^ で、a^→α とすると α(b^+b^†)=2αX^1(b) である。腕の光子数の差は入口 b^ の X^1 で決まり、これは (3) で縮めた X^2 と直交する向き、つまり伸ばした向きである。η=0.9 の分散の比は例題 31.5 (1) の 28.6 なので、放射圧の差の揺らぎは真空のときの 28.6=5.34 倍になる(置かない場合の厳密な分散は Ne2r+sinh2r)。読み出しの雑音(ショット雑音)を下げると、鏡を揺らす雑音(放射圧の雑音)が上がる。これはスクイーズの変換が面積を保つこと(命題 31.2)の直接の帰結である。放射圧の雑音は鏡が動きやすい低い周波数で、ショット雑音は高い周波数で大きいので、重力波の検出器は縮める向きを周波数ごとに回す。スクイーズド光を長い共振器(フィルター共振器)で反射させると、共振器の線幅の近くの周波数だけ位相が回り、低い周波数では X^1、高い周波数では X^2 を縮めた光になる。LIGO の2台の検出器は長さ 300m のフィルター共振器を足してこれを行い、1kHz の近くの雑音の振幅を 4.0dB(Hanford)と 5.8dB(Livingston)下げた(D. Ganapathy et al. (2023), Phys. Rev. X 13, 041021)。スクイーズド光の源は第17章の光パラメトリック発振器をしきい値の下で使ったものである。