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橋:代数と行列力学・第二量子化・自由場

2026年10月17日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第8部 第3章 Stone–von Neumann の定理の外側:無限自由度の CCR と CAR
目次
  1. 代数から行列力学へ、行列力学から代数へ
  2. 第二量子化の Fock 空間は表現の1つ
  3. 共通例題③:自由場の質量を変える
  4. この章の橋の一覧
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第8部 第3章 §8.3.6 ★★★ 有限自由度では代数の表現と行列力学・波動力学が両向きに一致することを示し、無限自由度では第二量子化の Fock 空間が多くの表現の1つにすぎないことを、自由場の質量を変える例(共通例題③)で示す

代数から行列力学へ、行列力学から代数へ

同値性の地図(第1部第1章)の「代数 ↔ 行列力学・第二量子化」の橋は、この章と第2部第6章(第2部第6章)・第6部第7章(第6部第7章)が受け持つ。自由度1で両向きを示す。

代数 → 行列力学。正則で既約な表現 π\pi をとる。定理 8.3.2 の証明により、射影 PπP_\pi の像は1次元で、その単位ベクトル ∣0⟩| 0 \rangle は φ0\varphi_0 を与える。正則性から x^\hat x、p^\hat p が生成子として作れ、a^=mω/(2ℏ)(x^+ip^/(mω))\hat a=\sqrt{m\omega/(2\hbar)}(\hat x+\mathrm{i}\hat p/(m\omega)) は a^∣0⟩=0\hat a| 0 \rangle =0 を満たす(φ0\varphi_0 の特性関数を a,ba,b で微分すると ∥a^∣0⟩∥2=⟨a^†a^⟩0=0\lVert \hat a| 0 \rangle \rVert ^2=\langle \hat a^\dagger\hat a \rangle _0=0 が出る)。∣n⟩≔(a^†)n∣0⟩/n!| n \rangle \coloneqq(\hat a^\dagger)^n| 0 \rangle /\sqrt{n!} は正規直交基底で、その上で

⟨n∣x^∣n+1⟩=(n+1)ℏ2mω,⟨n∣p^∣n+1⟩=−i(n+1)ℏmω2(8.3.17)\langle n | \hat x | n+1 \rangle =\sqrt{\frac{(n+1)\hbar}{2m\omega}},\qquad \langle n | \hat p | n+1 \rangle =-\mathrm{i}\sqrt{\frac{(n+1)\hbar m\omega}{2}}\tag{8.3.17}

である。これは Heisenberg・Born・Jordan が調和振動子について書いた行列そのもので(第2部第1章・第4章)、x^p^−p^x^=iℏ\hat x\hat p-\hat p\hat x=\mathrm{i}\hbar を満たす。

行列力学 → 代数。逆に、Heisenberg の行列 (8.3.17) が与えられたとする。有限個の成分しかもたない列ベクトルの上で ap^+bx^a\hat p+b\hat x は対称で、その閉包は自己共役である(このベクトルは H^\hat H の固有ベクトルの有限和なので、ap^+bx^a\hat p+b\hat x の解析ベクトルになる)。指数関数 W(a,b)=ei(ap^+bx^)/ℏW(a,b)=\mathrm{e}^{\mathrm{i}(a\hat p+b\hat x)/\hbar} を作ると、[x^, p^]=iℏ\left[\hat x,\,\hat p\right]=\mathrm{i}\hbar と Baker–Campbell–Hausdorff の公式から Weyl の関係 (8.3.3) が成り立ち、(a,b)↦W(a,b)(a,b)\mapsto W(a,b) は強連続なので、正則な表現が得られる。したがって行列力学は CCR 代数の1つの正則表現で、波動力学(Schrödinger 表現)も別の1つである。定理 8.3.2 により両者はユニタリ同値で、ユニタリは Hermite 関数への展開である。1926 年に Schrödinger が示した行列力学と波動力学の同値(第1部第4章 第1部第4章)は、代数の言葉ではこの1行に収まる。

第二量子化の Fock 空間は表現の1つ

無限自由度では、第二量子化の Fock 空間(第6部第2章)は、全部のモードが真空の状態 φF\varphi_{\mathrm F} の GNS 表現である。1粒子空間 h\mathfrak h の ff について W(f)=ei(a^(f)+a^(f)†)/2W(f)=\mathrm{e}^{\mathrm{i}(\hat a(f)+\hat a(f)^\dagger)/\sqrt2} と書けば、φF(W(f))=e−∥f∥2/4\varphi_{\mathrm F}(W(f))=\mathrm{e}^{-\lVert f\rVert ^2/4} で、これは (8.3.12) の積状態を1粒子空間の言葉で書いたものである。逆向きの橋は第8.3.2節の証明と同じ形で、「すべての a^(f)\hat a(f) で消されるベクトルを含む正則な表現は、Fock 表現の直和である」。この節までで見た、振動数を変えた真空・コヒーレントにずらした真空・満ちた Fermi の海・有限温度の状態は、どれもこのようなベクトルを含まない表現で、そこでは全粒子数の演算子を定義することができない。全粒子数が有限に定義できる表現は Fock 表現の直和に限ることが知られている(G.-F. Dell'Antonio, S. Doplicher and D. Ruelle (1966), Commun. Math. Phys. 2, 223 の補題2.3)。有限の密度で無限に広がった自由ボース気体の熱平衡状態の表現は H. Araki と E. J. Woods が具体的に作った1H. Araki and E. J. Woods (1963), “Representations of the canonical commutation relations describing a nonrelativistic infinite free Bose gas”, J. Math. Phys. 4, 637.下の脚注へ。熱平衡の表現は次の章(第8部第4章)で KMS 条件として扱う。

共通例題③:自由場の質量を変える

共通例題③の自由粒子を場にしたもの、つまり質量 mm の自由スカラー場を一辺 LL、体積 V=L3V=L^3 の箱(周期境界条件)で考える。波数 k\bm{k} のモードごとに、実の基準振動が1個ずつあり、それぞれ角周波数 ωk=c∣k∣2+κ2\omega_{\bm{k}}=c\sqrt{\lvert \bm{k}\rvert ^2+\kappa^2}(κ=mc/ℏ\kappa=mc/\hbar)の調和振動子である(第6部第1章)。場の真空は全部のモードの基底状態の積状態で、質量を m′m' に変えた場の真空は、各モードの振動数を ωk′=c∣k∣2+κ′2\omega'_{\bm{k}}=c\sqrt{\lvert \bm{k}\rvert ^2+\kappa'^2} に変えた積状態である。2つの真空の重なりは (8.3.10) をモードごとに掛けたもので、

ln⁡⟨0m∣0m′⟩=−12∑kln⁡cosh⁡rk,rk=14ln⁡∣k∣2+κ′2∣k∣2+κ2(8.3.18)\ln\langle 0_m | 0_{m'} \rangle =-\frac12\sum_{\bm{k}}\ln\cosh r_{\bm{k}},\qquad r_{\bm{k}}=\frac14\ln\frac{\lvert \bm{k}\rvert ^2+\kappa'^2}{\lvert \bm{k}\rvert ^2+\kappa^2}\tag{8.3.18}

になる。箱が大きいと和は V∫d3k/(2π)3V\int\mathrm{d}^3k/(2\pi)^3 に置き換えられ、u=∣k∣/κu=\lvert \bm{k}\rvert /\kappa とおくと

ln⁡⟨0m∣0m′⟩=−c~ Vκ3,c~=14π2∫0∞u2ln⁡cosh⁡r(u) du(8.3.19)\ln\langle 0_m | 0_{m'} \rangle =-\tilde c\,V\kappa^3,\qquad \tilde c=\frac{1}{4\pi^2}\int_0^\infty u^2\ln\cosh r(u)\,\mathrm{d} u\tag{8.3.19}

である。大きい uu では r(u)≈(κ′2−κ2)/(4κ2u2)r(u)\approx(\kappa'^2-\kappa^2)/(4\kappa^2u^2)、ln⁡cosh⁡r≈r2/2\ln\cosh r\approx r^2/2 なので被積分関数は u−2u^{-2} で減り、積分は収束する(図 8.3.2)。重なりが 00 に行く原因は短い波長の発散でなく、体積 VV に比例して増えるモードの数である。V→∞V\to\infty で重なりは 00 になり、定理 8.3.5 と同じ議論(各モードの V(b)V(b) の平均を巨視的な観測量にとる)で、質量の違う自由場の真空の表現は互いにユニタリ同値でない。同じ場の代数の上でも、ハミルトニアンが違えば真空は別の表現に住む。相互作用のある場で同じことが起きるという主張が Haag の定理で、相互作用描像を無限の体積でそのまま使えない理由になっている。

図

図 8.3.2 質量を2倍(κ′=2κ\kappa'=2\kappa)にした自由場の真空の重なりの被積分関数 u2ln⁡cosh⁡r(u)u^2\ln\cosh r(u)(実線)。点線は大きい uu での漸近形 9/(32u2)9/(32u^2)。曲線の下の面積を 4π24\pi^2 で割ったものが c~=0.003652\tilde c=0.003652 で、重なりは e−c~Vκ3\mathrm{e}^{-\tilde cV\kappa^3} になる。

例題 8.3.6 質量を2倍にした自由場の真空の重なり ★★

オリジナルκ′=2κ\kappa'=2\kappa とする。

  1. (1) 大きい uu での被積分関数の漸近形を求めよ。
  2. (2) c~=0.003652\tilde c=0.003652 を使い、Vκ3=1000V\kappa^3=1000 と Vκ3=106V\kappa^3=10^6 での重なりを求めよ。
  3. (3) 1つのモードあたりの重なりは小さい uu ほど 11 から離れるか、大きい uu ほど離れるか。重なりを 00 にしているのはどちらのモードか。
解答

(1) ln⁡u2+4u2+1=ln⁡(1+3u2+1)≈3u2\ln\frac{u^2+4}{u^2+1}=\ln\bigl(1+\frac{3}{u^2+1}\bigr)\approx\frac{3}{u^2} なので r≈34u2r\approx\frac{3}{4u^2}。ln⁡cosh⁡r≈r22=932u4\ln\cosh r\approx\frac{r^2}2=\frac{9}{32u^4} で、u2u^2 を掛けて 932u2\frac{9}{32u^2}。

(2) Vκ3=1000V\kappa^3=1000 で e−3.652=0.026\mathrm{e}^{-3.652}=0.026。Vκ3=106V\kappa^3=10^6 で e−3652\mathrm{e}^{-3652}、10進で 10−158610^{-1586} ほどで、実際上 00 である。

(3) 1つのモードの r(u)r(u) は u=0u=0 で最大 14ln⁡4=0.347\tfrac14\ln4=0.347 で、uu が大きいほど 00 に近づく。1つのモードあたりでは長い波長のモードほど重なりが小さい。しかし被積分関数には状態の数を数える因子 u2u^2 が掛かるので、図 8.3.2 のとおり u≈1.5u\approx1.5(波長が 1/κ1/\kappa 程度)の付近が一番大きく寄与する。重なりを 00 にしているのは特定のモードでなく、Vκ3V\kappa^3 に比例する数のモードの寄与の積み重ねである。検算スクリプトでは、L=40/κL=40/\kappa の箱の格子点の和が積分の値と 1%1\% 以内で一致することを確かめた。

この章の橋の一覧

この章で示した対応を、式で並べておく。

基準・ほかの部の言葉代数の言葉この章での位置
[x^, p^]=iℏ\left[\hat x,\,\hat p\right]=\mathrm{i}\hbarWeyl の関係 (8.3.3)+正則性定義 8.3.1
真空 ∣0⟩⟨0∣| 0 \rangle \langle 0 |P=12πℏ∫e−∣z∣ω2/4W(z) d2zP=\frac1{2\pi\hbar}\int\mathrm{e}^{-\lvert z\rvert _\omega^2/4}W(z)\,\mathrm{d}^2z補題 8.3.3
行列力学=波動力学(第2部第6章)正則な既約表現は1つ定理 8.3.2
熱平衡の ρ^β\hat\rho_\beta(第4部第4章)準同値な表現の中の正規状態例題 8.3.2
スクイーズ a^′=cosh⁡r a^+sinh⁡r a^†\hat a'=\cosh r\,\hat a+\sinh r\,\hat a^\dagger有限自由度ではユニタリで実装、無限自由度では一般に不可(8.3.9)・定理 8.3.5
Fock 空間(第6部第2章)φF\varphi_{\mathrm F} の GNS 表現(多くの表現の1つ)第8.3.6節
Fermi の海・BCS(第6部)空の Fock 状態と別の表現第8.3.5節
質量の違う自由場(共通例題③)真空の重なり e−c~Vκ3\mathrm{e}^{-\tilde cV\kappa^3}(8.3.19)
図

図 8.3.3 有限自由度と無限自由度での表現の様子。上段の3つの表示はユニタリで結ばれ、1つの表現の別の書き方である。下段の表現は互いにユニタリで結べない(破線の ×\times)。どれも同じ代数の表現で、どの表現に住むかを状態(とハミルトニアン)が決める。

1 H. Araki and E. J. Woods (1963), “Representations of the canonical commutation relations describing a nonrelativistic infinite free Bose gas”, J. Math. Phys. 4, 637.

木下の勉強ステータス

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