解答
(1) 例題 4.2.3 の (1) と同じで、−∂f0/∂ε=δ(ε−εF) が2つの Fermi 点で δ(k∓kF)/(ℏvF) を与えるのでσ=2e2τ⋅2π1⋅2⋅ℏvFvF2=πℏ2e2τvF。
(2) 電子密度は n=2⋅2kF/(2π)=2kF/π。1/m∗(k)=2ta2cos(ka)/ℏ2 を ∣k∣<kF で平均すると⟨1/m∗⟩=ℏ22ta2kFasin(kFa)。したがってe2τn⟨1/m∗⟩=π2kFe2τℏ2kFa2ta2sin(kFa)=πℏ24tae2τsin(kFa)で、vF=(2ta/ℏ)sin(kFa) を入れた (1) の 2e2τvF/(πℏ) と一致する。Fermi 点の電子だけの数え方と、占められた全電子の質量の平均とは、ここでも同じ量である。
(3) 不純物の Hamiltonian は V^=U0∑j∈imp∣j⟩⟨j∣ で、
⟨k′∣V^∣k⟩=NU0j∈imp∑ei(k−k′)ja.
k′=k のとき、絶対値の2乗の和 ∑j,l∈impei(k−k′)(j−l)a を不純物の配置について平均すると、j=l の項からは不純物の数 cN が残り、j=l の項は位相がでたらめなので(c≪1 の範囲で)消える。したがって平均は U02cN/N2=U02c/N である(数値で N=400、c=0.05 の配置を 400 通り平均すると c(1−c) に合う。c≪1 では c)。黄金律で k から k′ への率は ℏ2πNU02cδ(εk−εk′) で、∑k′=2πL∫dk′ と δ(εk−εk′)=∑±δ(k′∓k)/(ℏvF) を使うと、k′=−k への後方散乱の率は
τb1=ℏ2πNU02c⋅2πNa⋅ℏvF1=ℏ2vFU02ca
である。衝突の項 (4.2.6) では、k′=k への散乱は δfk′−δfk=0 で寄与せず、k′=−k への散乱は電場の1次のずれが奇関数(δf−k=−δfk)なので −2δfk を与える。1次元の cosθ は ±1 だけで、命題 4.2.1 の 1−cosθ が後方散乱で 2 になることにあたる。したがって
τtr1=τb2=ℏ2vF2U02ca=ℏtsin(kFa)U02c.
Fermi 速度が小さいバンドの端ほど状態密度が大きく、散乱の行き先が多いので、τtr は短くなる。
(4) ℓ=vFτtr=2U02caℏ2vF2=U02c2t2asin2(kFa)、σ=πℏ2e2ℓ=πℏU02c4e2t2asin2(kFa) で、h=2πℏ を使えば σ=(4e2/h)ℓ である。長さ L の鎖の抵抗は R=L/σ=4e2hℓL で、量子化された抵抗 h/(4e2)(スピン2つ・向き2つ)の L/ℓ 倍になる。この h/e2 の単位が1次元の伝導の自然な目盛りであることは、Landauer の公式として第4部第7章で扱う。数値では ℓ=2×12×0.25nm/(0.52×0.01)=200nm、kFℓ=(π/2a)ℓ=1257 で、Born 散乱の数え方が使える範囲にある。1μm の鎖の抵抗は R=(h/4e2)×5=32.3kΩ である。ただし1次元では、どんなに弱い乱れでも鎖が ℓ の数倍より長いと干渉で電子が局在するので、この結果は L が ℓ の数倍までの目安である(4.2.5節で削った干渉)。
(5) (1) で εF を一般の ε にし、τtr(ε) を (3) から入れるとσ(ε)=πℏ2e2v(ε)τtr(ε)=πU02cae2ℏv(ε)2。ε=−2tcos(ka) から v2=(2ta/ℏ)2sin2(ka)=(2ta/ℏ)2(1−ε2/4t2) なので
σ(ε)=σ(0)(1−4t2ε2).
半分詰めでは状態密度が ε=0 について対称なので、化学ポテンシャルは温度によらず μ=0 に留まる。Sommerfeld 展開から
σ(T)=∫σ(ε)(−∂ε∂f0)dε=σ(0)+6π2(kBT)2σ′′(0)=σ(0)[1−12π2(tkBT)2]
で、σ(ε) が2次式なのでこの展開は厳密である(kBT=0.05t の数値積分と 10−5 より良く一致)。t=1eV、T=300K では補正は 5.5×10−4 で、不純物だけの散乱では抵抗率はほとんど温度によらない。これが Matthiessen 則 (4.2.18) の残留抵抗 ρ0 が一定とみなせる理由である。ここで使った σ(ε) の ε についての傾きは、第4部第3章で熱電能(Mott の公式)を決める量になる。この半分詰めの鎖では傾きが 0 なので、熱電能も最低次で 0 になる。