解答
(1) ω0=2πc/λ=2.415×1015s−1 で、B21=π2c3A21/(ℏω03)=6.80×1021m3J−1s−2。誘導放出/自然放出は nˉph=1/(eℏω0/kBT−1)=1.98×10−27 倍で、室温の熱放射は可視光に近いこの遷移にまったく寄与しない(第1章の熱の光子の議論と同じ)。
(2) 式 (20.13) で g2=1, S12=∣deg∣2 として ∣deg∣2=3πε0ℏc3A21/ω03、∣deg∣=2.98ea0 である。A21 は1つの双極子がすべての向きへ光を出す速さなので、双極子の向きはここでは平均されていない。
(3) 光の偏光が双極子の向きにそろっているので、∣deg⋅e∣2=∣deg∣2 で、向きの平均の 31 が付かない。共鳴の断面積は式 (20.20) の3倍の σ0=3λ2/(2π)=2.90×10−13m2 である。Doppler 幅は式 (20.18) から δωD/2π=511MHz で、自然幅 Γ/2π=6.05MHz の約 85 倍である。断面積は S に比例し、線の中心ではSG(ω0)/SL(ω0)=2πΓ⋅δωD2ln2/π=0.0175 倍、つまり 5.07×10−15m2 に小さくなる。線の面積は変わらないので、吸収の強さを広い周波数に配り直しただけである。
(4) g1=g2 なので σ12=σ21 で、吸収と誘導放出の速さはどちらも W である。式 (20.2) は dtdρee=W(1−ρee)−Wρee−Γρee になり、定常解は
ρee=Γ+2WW=211+2W/Γ2W/Γ
である。強度を上げると ρee→21 に近づき、それを超えない(2準位では反転分布を作れない。第21章)。ρee=41 になるのは 2W/Γ=1 のときで、共鳴の W=σ0I/(ℏω0) から
Is=2σ0ℏω0Γ=2⋅3λ2/(2π)ℏ(2πc/λ)A21=3λ32π2ℏcA21=3λ3πhcA21=16.7Wm−2=1.67mWcm−2
を得る。
(5) 定常で dtdρeg=0 から ρeg=−iΔ−Γ/2iΩ(1−2ρee)/2、その虚部は Imρeg=2Ω(1−2ρee)Δ2+Γ2/4Γ/2 である。これを ΩImρeg=Γρee に入れて解くと
ρee=Δ2+Γ2/4+Ω2/2Ω2/4.
一方、(4) の W/(Γ+2W) に W=ΓΩ21+4Δ2/Γ21=4Ω2Δ2+Γ2/4Γ を入れると、分子と分母に (Δ2+Γ2/4)/Γ を掛けて同じ式になる。2つの定常解はすべての Ω, Δ で一致する。この W が (4) の断面積の式と同じであることは、σ12=σ0/(1+4Δ2/Γ2), I=21cε0E02, Ω=∣deg∣E0/ℏ と (2) の ∣deg∣2 からσ0I/(ℏω0)=Ω2/Γ が出ることで確かめられる。同じく I/Is=2W0/Γ=2Ω2/Γ2(W0 は共鳴の W)で、定常解はρee=211+I/Is+4Δ2/Γ2I/Is と書ける。分母の I/Is のために、強い光では共鳴の幅が Γ1+I/Is に広がる(パワー広がり)。
過渡の振る舞いは違う。速さの方程式では ρee が時定数 1/(Γ+2W) で単調に定常値へ近づくのに対し、光 Bloch 方程式では、コヒーレンスが育つまでの立ち上がりが t2 で遅れ、Ω≳Γ のときは Rabi 振動で振れながら近づく(図 20.4)。定常の値だけを使う量(散乱される光子の数 Γρee、第25章の散乱力)は速さの方程式で正しく計算でき、光を当て始めた直後の振る舞いは光 Bloch 方程式が要る。