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3本の筋の回収:分極率・櫛・球

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第35章 終章:モードと2準位系で何が言えたか
目次
  1. 分極率:屈折率と光の力は同じ量の2つの顔
  2. 縦モードの櫛:光の周波数を数える
  3. Poincaré 球と Bloch 球:Pauli 行列が1組だけ
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第35章 §35.2 ★★★ 分極率 α(ω)\alpha(\omega) は屈折率と光の力を、縦モードの櫛は光の周波数の数え方を、Pauli 行列は偏光と2準位原子を、それぞれ1つの式で結んだ

分極率:屈折率と光の力は同じ量の2つの顔

序章で予告した1つ目の筋は分極率 α(ω)\alpha(\omega) だった。第3部では、希薄な気体の屈折率が n−1≈NRe⁡α/(2ε0)n-1\approx N\operatorname{Re}\alpha/(2\varepsilon_0)(NN は原子の数密度)で決まり(第11章)、吸収係数が αabs=Nσabs\alpha_{\mathrm{abs}}=N\sigma_{\mathrm{abs}}、断面積が σabs=ωIm⁡α/(ε0c)\sigma_{\mathrm{abs}}=\omega\operatorname{Im}\alpha/(\varepsilon_0c) で決まった(第10章)。第5部では、同じ α\alpha の実部が双極子力のポテンシャル U=−14Re⁡α∣E0∣2U=-\frac14\operatorname{Re}\alpha\lvert E_0\rvert ^2 を、虚部が散乱力 σabsI/c\sigma_{\mathrm{abs}}I/c を決めた(第25章)。

2つの式から Re⁡α\operatorname{Re}\alpha を消すと、強度 I=12cε0∣E0∣2I=\frac12c\varepsilon_0\lvert E_0\rvert ^2 を使って

U=−(n−1)INc(35.1)U=-\frac{(n-1)I}{Nc}\tag{35.1}

を得る。気体の屈折率を測れば、同じ光で原子1個が感じるポテンシャルの深さが、物質のモデルを決めずに分かる。n>1n>1 の気体の原子は光の強い所へ引き寄せられ、n<1n<1 の気体の原子は押し出される。虚部の側も同じ形で、吸収係数を原子の数密度で割ったもの σabs=αabs/N\sigma_{\mathrm{abs}}=\alpha_{\mathrm{abs}}/N に I/cI/c を掛けると散乱力になる。屈折と光の力、吸収と光の圧力は、同じ複素数 α(ω)\alpha(\omega) の実部と虚部を、光の側から見るか原子の側から見るかの違いである。図 35.1 は Lorentz 振動子の Re⁡α\operatorname{Re}\alpha で、共鳴より低い周波数(赤い離調)では正、高い周波数(青い離調)では負になる。屈折率が 11 より大きいか小さいかと、原子が引き寄せられるか押し出されるかは、この曲線の符号1つで同時に決まる。

図

図 35.1 Lorentz 振動子の分極率の実部(減衰 γ=0.06 ω0\gamma=0.06\,\omega_0)。縦軸の量は希薄な気体の n−1n-1 に比例し、双極子力のポテンシャル UU には負の比例係数で比例する(式 (35.1))。

例題 35.2 屈折率の測定から光の罠の深さを出す ★★★

オリジナル遷移の双極子の行列要素 d=3.58×10−29 C md=3.58\times10^{-29}\,\mathrm{C\,m} の2準位原子の気体(数密度 N=1017 m−3N=10^{17}\,\mathrm{m^{-3}})に、離調 Δ/2π=−10 GHz\Delta/2\pi=-10\,\mathrm{GHz} の光を当てる。離調は自然幅よりずっと大きく、回転波近似の分極率 α≈−d2/(ℏΔ)\alpha\approx-d^2/(\hbar\Delta)(第1章)が使えるとする。

  1. (1) α\alpha と n−1n-1 を求めよ。
  2. (2) 同じ光を強度 I=107 W m−2I=10^7\,\mathrm{W\,m^{-2}} に集光したとき、原子1個が感じるポテンシャル UU を、式 (35.1) から求め、U/kBU/ k_{\mathrm B} を mK で答えよ。
  3. (3) (2) の値が U=ℏΩ2/(4Δ)U=\hbar\Omega^2/(4\Delta) と一致することを確かめよ。
解答

(1) ∣Δ∣=2π×1010 s−1\lvert \Delta\rvert =2\pi\times10^{10}\,\mathrm{s^{-1}} なので α=d2/(ℏ∣Δ∣)=(3.58×10−29)2/(1.0546×10−34×6.283×1010)≈1.93×10−34 C m2 V−1\alpha=d^2/(\hbar\lvert \Delta\rvert )=(3.58\times10^{-29})^2/(1.0546\times10^{-34}\times6.283\times10^{10})\approx1.93\times10^{-34}\,\mathrm{C\,m^2\,V^{-1}}(赤い離調で正)。n−1=Nα/(2ε0)=1017×1.93×10−34/(2×8.854×10−12)≈1.09×10−6n-1=N\alpha/(2\varepsilon_0)=10^{17}\times1.93\times10^{-34}/(2\times8.854\times10^{-12})\approx1.09\times10^{-6} である。

(2) U=−(n−1)I/(Nc)=−1.09×10−6×107/(1017×2.998×108)≈−3.64×10−25 JU=-(n-1)I/(Nc)=-1.09\times10^{-6}\times10^7/(10^{17}\times2.998\times10^8)\approx-3.64\times10^{-25}\,\mathrm J、U/kB≈−26.4 mKU/ k_{\mathrm B}\approx-26.4\,\mathrm{mK}。原子は光の強い所へ引き寄せられる。気体の屈折率がわずか 10−610^{-6} だけ 11 からずれていても、原子1個あたりに直すと 26 mK26\,\mathrm{mK} の深さになる。式 (35.1) の分母の NN が小さいからである。

(3) E02=2I/(cε0)≈7.53×109 V2m−2E_0^2=2I/(c\varepsilon_0)\approx7.53\times10^9\,\mathrm{V^2m^{-2}}、Ω2=d2E02/ℏ2\Omega^2=d^2E_0^2/\hbar^2 からℏΩ2/(4Δ)=d2E02/(4ℏΔ)=−αE02/4\hbar\Omega^2/(4\Delta)=d^2E_0^2/(4\hbar\Delta)=-\alpha E_0^2/4 で、これは U=−14α∣E0∣2U=-\frac14\alpha\lvert E_0\rvert ^2 そのものである。数値も −3.64×10−25 J-3.64\times10^{-25}\,\mathrm J で一致する。

縦モードの櫛:光の周波数を数える

2つ目の筋は縦モードの櫛だった。第5章の共振器の縦モードは間隔 νFSR\nu_{\mathrm{FSR}} で並ぶ(第5章)。第23章で、その位相をそろえるとパルス列になり、1周ごとに搬送波と包絡線の位相が Δϕce\Delta\phi_{\mathrm{ce}} ずつずれるパルス列のスペクトルが、厳密に

νn=n νrep+νceo,νceo=Δϕce2πνrep(35.2)\nu_n=n\,\nu_{\mathrm{rep}}+\nu_{\mathrm{ceo}},\qquad\nu_{\mathrm{ceo}}=\frac{\Delta\phi_{\mathrm{ce}}}{2\pi}\nu_{\mathrm{rep}}\tag{35.2}

の櫛になることを示した(第23章)。νrep\nu_{\mathrm{rep}} と νceo\nu_{\mathrm{ceo}} はどちらもマイクロ波の周波数で、電子回路で数えることができる。未知の光の周波数は、櫛の歯とのうなりの周波数 fbf_{\mathrm b} を測れば、ν=nνrep+νceo±fb\nu=n\nu_{\mathrm{rep}}+\nu_{\mathrm{ceo}}\pm f_{\mathrm b} で決まる。光の周波数(1014 Hz10^{14}\,\mathrm{Hz} の桁)を、マイクロ波の周波数(108 Hz10^8\,\mathrm{Hz} の桁)の整数倍と端数に分けて数えるのが光周波数コムで、第28章の原子時計で時計の光の周波数を秒の定義につなぐ道具になる(第28章)。式 (35.2) は周期的なパルス列についての恒等式なので、近似の札は付かない。この巻で札の無い結果の数少ない例である。

Poincaré 球と Bloch 球:Pauli 行列が1組だけ

3つ目の筋は2つの球だった。偏光の Jones ベクトル ψ=(Ex,Ey)T\psi=(E_x,E_y)^{\mathsf T} から Stokes パラメータを (S1,S2,S3)=ψ†(σz,σx,σy)ψ(S_1,S_2,S_3)=\psi^\dagger(\sigma_z,\sigma_x,\sigma_y)\psi で作ると Poincaré 球になり(第15章)、2準位原子の状態 (ce,cg)T(c_e,c_g)^{\mathsf T} から Bloch ベクトルを (u,v,w)=⟨(σx,σy,σz)⟩(u,v,w)=\langle (\sigma_x,\sigma_y,\sigma_z) \rangle で作ると Bloch 球になる(第19章)。同じ Pauli 行列を使うので、Ex↔ceE_x\leftrightarrow c_e、Ey↔cgE_y\leftrightarrow c_g と読み替えると、2つの球は軸の名前を

S1↔w,S2↔u,S3↔v(35.3)S_1\leftrightarrow w,\qquad S_2\leftrightarrow u,\qquad S_3\leftrightarrow v\tag{35.3}

と付け替えただけの同じ球になる。水平偏光 ∣H⟩| H \rangle が励起状態 ∣e⟩| e \rangle(北極)に、垂直偏光 ∣V⟩| V \rangle が基底状態 ∣g⟩| g \rangle(南極)に当たる。

球の上の点を動かす操作も対応する。進相軸の角 θ\theta、位相差 Γ\Gamma の波長板 W(θ,Γ)=R(θ) diag(1,eiΓ) R(−θ)\mathsf W(\theta,\Gamma)=\mathsf R(\theta)\,\mathrm{diag}(1,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\Gamma})\,\mathsf R(-\theta) は、全体の位相を除いて Poincaré 球の経度 2θ2\theta の軸のまわりの角 Γ\Gamma の回転である(第15章)。とくに θ=−45∘\theta=-45^\circ では

W(−45∘,Γ)=eiΓ/2exp⁡(iΓ2σx)(35.4)\mathsf W(-45^\circ,\Gamma)=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\Gamma/2}\exp\Bigl(\frac{\mathrm{i}\Gamma}{2}\sigma_x\Bigr)\tag{35.4}

になる。一方、共鳴(Δ=0\Delta=0)の光を時間 tt だけ当てた2準位原子の時間発展は、回転座標の Hamiltonian H^=−ℏΩ2σx\hat H=-\frac{\hbar\Omega}{2}\sigma_x から exp⁡(iΩtσx/2)\exp(\mathrm{i}\Omega t\sigma_x/2) である(第18章)。2つは Γ=Ωt\Gamma=\Omega t で同じ行列になる。λ/4\lambda/4 板は π/2\pi/2 パルス、λ/2\lambda/2 板は π\pi パルスに当たり、進相軸の向きは Rabi 周波数の位相(回転軸の経度)に当たる。閉じた道を回ったときの Pancharatnam 位相が Berry 位相と同じ式になるのも、この対応による(第15章・解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第9章)。

例題 35.3 λ/4\lambda/4 板と π/2\pi/2 パルスを同じ回転として計算する ★★

オリジナル

  1. (1) R(θ)=exp⁡(−iθσy)\mathsf R(\theta)=\exp(-\mathrm{i}\theta\sigma_y) を使って、式 (35.4) を示せ。
  2. (2) 垂直偏光 ∣V⟩=(0,1)T| V \rangle =(0,1)^{\mathsf T} に W(−45∘,π/2)\mathsf W(-45^\circ,\pi/2) を当てたあとの Stokes パラメータを求めよ。
  3. (3) 基底状態の2準位原子に共鳴の π/2\pi/2 パルス(Ωt=π/2\Omega t=\pi/2)を当てたあとの Bloch ベクトルを求め、(2) と式 (35.3) で対応することを確かめよ。
解答

(1) diag(1,eiΓ)=eiΓ/2exp⁡(−iΓσz/2)\mathrm{diag}(1,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\Gamma})=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\Gamma/2}\exp(-\mathrm{i}\Gamma\sigma_z/2) と書くことができる。R(θ)σzR(−θ)=e−iθσyσzeiθσy=σzcos⁡2θ+σxsin⁡2θ\mathsf R(\theta)\sigma_z\mathsf R(-\theta)=\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\theta\sigma_y}\sigma_z\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta\sigma_y}=\sigma_z\cos2\theta+\sigma_x\sin2\theta なので、θ=−45∘\theta=-45^\circ では σz→−σx\sigma_z\to-\sigma_x になり、W(−45∘,Γ)=eiΓ/2exp⁡(+iΓσx/2)\mathsf W(-45^\circ,\Gamma)=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\Gamma/2}\exp(+\mathrm{i}\Gamma\sigma_x/2) を得る。

(2) exp⁡(iπσx/4)=(1+iσx)/2\exp(\mathrm{i}\pi\sigma_x/4)=(1+\mathrm{i}\sigma_x)/\sqrt2 を (0,1)T(0,1)^{\mathsf T} に当てると (i,1)T/2(\mathrm{i},1)^{\mathsf T}/\sqrt2(全体の位相は除く)。S1=∣Ex∣2−∣Ey∣2=0S_1=\lvert E_x\rvert ^2-\lvert E_y\rvert ^2=0、S2=2Re⁡(Ex∗Ey)=2Re⁡(−i/2)=0S_2=2\operatorname{Re}(E_x^*E_y)=2\operatorname{Re}(-\mathrm{i}/2)=0、S3=2Im⁡(Ex∗Ey)=2Im⁡(−i/2)=−1S_3=2\operatorname{Im}(E_x^*E_y)=2\operatorname{Im}(-\mathrm{i}/2)=-1。南極から −S3-S_3 の極(螺旋度 −- の円偏光)へ 90∘90^\circ 回った。

(3) 同じ行列を (ce,cg)=(0,1)(c_e,c_g)=(0,1) に当てて (ce,cg)=(i,1)/2(c_e,c_g)=(\mathrm{i},1)/\sqrt2。ρeg=cecg∗=i/2\rho_{eg}=c_ec_g^*=\mathrm{i}/2 なので u=2Re⁡ρeg=0u=2\operatorname{Re}\rho_{eg}=0、v=−2Im⁡ρeg=−1v=-2\operatorname{Im}\rho_{eg}=-1、w=∣ce∣2−∣cg∣2=0w=\lvert c_e\rvert ^2-\lvert c_g\rvert ^2=0。Bloch ベクトルは (0,−1,0)(0,-1,0) で、式 (35.3) の S3↔vS_3\leftrightarrow v により (2) の (S1,S2,S3)=(0,0,−1)(S_1,S_2,S_3)=(0,0,-1) と同じ点である。偏光計で円偏光を作る操作と、原子に π/2\pi/2 パルスを当てて重ね合わせを作る操作は、同じ球の同じ回転である。

木下の勉強ステータス

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