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測って得られる分布と、位相空間の構成の限界

2026年10月17日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第6章 光の状態の地図:コヒーレント・スクイーズド・猫状態と P・Q 表示、位相空間の構成の限界
目次
  1. どの分布を測っているか
  2. 位相空間の構成の限界
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第5部 第6章 §5.6.5 ★★ ホモダイン検出は WW の周辺分布を、8ポートのヘテロダイン検出は QQ を、光子計数は PP の積分を測る。位相空間の構成が書きにくいものは、多モード・非2次の動力学・有限次元の系・フェルミ粒子

どの分布を測っているか

3つの分布は計算の道具であるだけでなく、それぞれに対応する測定がある。

ホモダイン検出と WW。強い局部発振光(位相 θ\theta のコヒーレント状態)を信号とビームスプリッタで混ぜ、2つの出口の光電流の差を取ると、差は信号の直交位相 X^θ\hat X_\theta に比例する(光学と量子エレクトロニクス 第31章)。X^θ=cos⁡θ X^1+sin⁡θ X^2\hat X_\theta=\cos\theta\,\hat X_1+\sin\theta\,\hat X_2 は x,px,p の1次結合なので、第5部第2章の「1次結合の分布は WW を直線に沿って積分したもの」から、測られる分布は

Prθ(X)=∫W(α) δ(X−cos⁡θ X1−sin⁡θ X2) d2α(5.6.19)\mathrm{Pr}_\theta(X)=\int W(\alpha)\,\delta\bigl(X-\cos\theta\,X_1-\sin\theta\,X_2\bigr)\,\mathrm{d}^2\alpha\tag{5.6.19}

で、WW の回転した軸への周辺分布である。θ\theta を 00 から π\pi まで回してすべての周辺分布を集めると、逆 Radon 変換で WW が決まる。回転した直交位相の分布と擬確率分布が互いに決め合うことは W. Vogel and H. Risken (1989), Phys. Rev. A 40, 2847 が示し、D. T. Smithey, M. Beck, M. G. Raymer and A. Faridani (1993), Phys. Rev. Lett. 70, 1244 がスクイーズド光の WW を実験で再構成した(光ホモダイン・トモグラフィー)。空洞に閉じ込めたマイクロ波の光子では、S. Deléglise et al. (2008), Nature 455, 510 が猫状態の WW を再構成し、損失で縞が消えていく様子を時刻ごとに示した。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 局部発振光の振幅 ∣βLO∣→∞\lvert \beta_{\mathrm{LO}}\rvert \to\infty で、光電流の差の測定を直交位相 X^θ\hat X_\theta の射影測定で置き換える | 証明 条件付き〔局部発振光がコヒーレント状態であること。強い局部発振光の極限で測定の POVM が直交位相の射影測定に近づくことを Tyc and Sanders (2004), J. Phys. A 37, 7341 が直接導いた(同論文の定理1で確認。平衡型で局部発振光の振幅 A→∞A\to\infty の極限の主張で、有限の AA の補正の級数は Fock 基底で打ち切った状態では有限和で厳密になるが、一般の状態での収束は同論文でも予想〔Conjecture 1〕にとどまる)〕 | 行き先 近似の数理 第1章

ヘテロダイン検出と QQ。信号を 50:50 のビームスプリッタで2つに分け、片方で X^1\hat X_1、もう片方で X^2\hat X_2 をホモダイン検出する(8ポートの検出器)。2つの読みを 2\sqrt2 倍して α\alpha の実部と虚部と読むと、その同時分布は QQ に等しい。空いた入口から入る真空が、両方の読みに分散 14\frac14 の雑音を足すためである。位置と運動量の同時測定の読みの分布が「WW を別の状態の WW でならした非負の分布」になることは 第5部第4章で Arthurs–Kelly の模型(E. Arthurs and J. L. Kelly, Jr. (1965), Bell Syst. Tech. J. 44, 725)として扱った。窓を真空に選んだものが QQ である。QQ が (W3) の周辺分布を満たさないのは、同時測定が真空の雑音を両方の読みに足すからである。

光子計数と PP。光電子の計数は正規順序の量 ⟨(a^†)ma^m⟩\langle (\hat a^\dagger)^m\hat a^m \rangle を測る(Glauber 1963、光学と量子エレクトロニクス 第32章)。定理 5.6.2 からこれは ∫P∣α∣2md2α\int P\lvert \alpha\rvert ^{2m}\mathrm{d}^2\alpha で、計数の統計が古典の場の揺らぎで書けるかどうかが、PP が確率分布かどうかと同じことになる。PP は直接に測られる分布ではなく、正規順序の期待値の母関数として現れる。

例題 5.6.5 位相のずれたホモダイン検出で測るスクイーズ ★★

オリジナル10 dB のスクイーズド真空(e−2r=0.1\mathrm{e}^{-2r}=0.1)を、局部発振光の位相が細い向きから θ=5∘\theta=5^\circ ずれた状態でホモダイン検出する。(5.6.19) から Var Xθ\mathrm{Var}\,X_\theta を求め、測られるスクイーズを dB で答えよ。測られる分散が真空と同じ 14\frac14 になる角度を求めよ。

解答

(5.6.11) の WW は X1,X2X_1,X_2 に相関のない Gauss 関数なので、X=cos⁡θ X1+sin⁡θ X2X=\cos\theta\,X_1+\sin\theta\,X_2 の分散は

Var Xθ=cos⁡2θ Var X1+sin⁡2θ Var X2=e−2rcos⁡2θ+e2rsin⁡2θ4.\mathrm{Var}\,X_\theta=\cos^2\theta\,\mathrm{Var}\,X_1+\sin^2\theta\,\mathrm{Var}\,X_2=\frac{\mathrm{e}^{-2r}\cos^2\theta+\mathrm{e}^{2r}\sin^2\theta}{4} .

θ=5∘\theta=5^\circ で cos⁡2θ=0.99240\cos^2\theta=0.99240、sin⁡2θ=0.0075961\sin^2\theta=0.0075961 から Var Xθ=(0.09924+0.07596)/4=0.04380\mathrm{Var}\,X_\theta=(0.09924+0.07596)/4=0.04380。真空との比 0.04380/0.25=0.17520.04380/0.25=0.1752 で 7.567.56 dB である。位相が 5∘5^\circ ずれただけで、10 dB のうち 2.4 dB が失われる。反スクイーズの e2r=10\mathrm{e}^{2r}=10 が sin⁡2θ\sin^2\theta で混ざるからで、スクイーズが強いほど位相の揺れに弱い。分散が 14\frac14 になるのは sin⁡2θ=(1−e−2r)/(e2r−e−2r)=0.09091\sin^2\theta=(1-\mathrm{e}^{-2r})/(\mathrm{e}^{2r}-\mathrm{e}^{-2r})=0.09091、θ=17.55∘\theta=17.55^\circ のときである。

位相空間の構成の限界

第5部の構成は、1つの自由度の量子力学を、相空間の上の実数の関数1つと ⋆\star 積で完全に書き直す。その代わりに、次のものは書きにくい。

第一に、自由度の数が増えると、WW は 2N2N 変数の関数になる。Gauss 型の状態は共分散行列(2N×2N2N\times2N)だけで閉じるので多モードでも扱いやすいが、猫状態のような非 Gauss の状態では関数の情報量が自由度とともに指数関数的に増え、密度行列を Fock 空間で持つのと手間は変わらない。

第二に、HH が x,px,p の2次でないと、Moyal 方程式は ℏ2\hbar^2 の高階の微分を含み(第5部第3章)、Liouville 方程式のように相空間の点の流れとして読むことができなくなる。Kerr の ℏκn^2\hbar\kappa\hat n^2 のように光子数で書いた方が簡単な HH では、位相空間の方が遠回りになる(第5部第4章の Kerr 発展は Fock 基底で解いた)。第5部第5章が示したように、ℏ2\hbar^2 の項を摂動として扱う半古典近似も、時刻 ∝1/ℏ\propto1/\hbar の復活は書けない。

第三に、スピンや量子ビットのような有限次元の系には、連続の相空間が無い。離散の位相空間の Wigner 関数(第5部第5章の Wootters の 2×22\times2 点)や、球面の上の Wigner 関数を作ることはできるが、作り方が一意でなく、⋆\star 積の簡単な形も失われる。

第四に、フェルミ粒子は反交換関係 {c^,c^†}+=1\{\hat c,\hat c^\dagger\}_+=1 を持つので、α\alpha を普通の複素数に置けない。コヒーレント状態の固有値を Grassmann 数に取れば形式的に同じ構成ができるが、分布はもはや数値の関数ではない(第6部第6章のコヒーレント状態の経路積分で導入する)。

第五に、WW の負の値と PP の特異さのため、3つの分布のどれも、量子の状態を古典の確率分布として標本を取ってシミュレーションする方法には、そのままでは使えない。QQ は非負だが、Kerr のような非線形の HH では QQ の時間発展の式が正定値でない拡散の項や3階以上の微分を含み、確率過程として解けない。位相空間の次元を倍にして、どんな状態にも非負の分布を与える一般化 PP 表示(P. D. Drummond and C. W. Gardiner (1980), J. Phys. A 13, 2353)はこの困難を避ける1つの方法で、その代わりに分布が状態に対して一意でなくなる。どの ss を選んでも、(W2)(W3)(W5) を同時に満たすことはできない。これは 第5部第1章の定理の帰結で、位相空間の構成に限界がある理由である。

木下の勉強ステータス

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