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橋:反交換関係と、テンソル積・行列力学・経路積分・代数

2026年10月17日14分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第3章 ボース粒子とフェルミ粒子:交換子と反交換子
目次
  1. この章が架けた橋
  2. 式を並べる
  3. 学部の授業での書き方との対応
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第6部 第3章 §6.3.6 ★★★ 反対称な波動関数 ⇔ 反交換関係(第2章)に加えて、フェルミ粒子の Fock 空間 ⇔ 量子ビットのテンソル積(Jordan–Wigner)を両向きに証明する

この章が架けた橋

巻の地図(第1部第1章)の「状態ベクトル ↔ 第二量子化」の橋は第2章が置き場で、反対称な NN 粒子の波動関数と反交換関係の代数が両向きに移り合うことを示した。この章はその橋のフェルミ粒子の側を細かく見たもので、排他律は波動関数の側の「行列式の2行が等しければ0」と代数の側の (c^†)2=0(\hat c^\dagger)^2=0(命題 6.3.2)が対応する。それに加えて、この章では基準の公理 Q6(合成系はテンソル積。第1部第2章)とフェルミ粒子の Fock 空間を直接結ぶ橋を、両向きに証明する。

定理 6.3.4(Jordan–Wigner の対応 ★★★)

  1. (i) (テンソル積からフェルミ粒子へ)(C2)⊗M(\mathbb{C}^2)^{\otimes M} の上で (6.3.6) の c^j=Z^1⋯Z^j−1σ^j−\hat c_j=\hat Z_1\cdots\hat Z_{j-1}\hat\sigma_j^- は反交換関係 {c^i,c^j†}+=δij\{\hat c_i,\hat c_j^\dagger\}_{+}=\delta_{ij}、{c^i,c^j}+=0\{\hat c_i,\hat c_j\}_{+}=0 を満たす。
  2. (ii) (フェルミ粒子からテンソル積へ)ヒルベルト空間 K\mathcal K の上に反交換関係を満たす c^1,…,c^M\hat c_1,\dots,\hat c_M があれば、σ^j−=(1−2n^1)⋯(1−2n^j−1)c^j\hat\sigma_j^-=(1-2\hat n_1)\cdots(1-2\hat n_{j-1})\hat c_j は同じ番号どうしで {σ^j−,σ^j+}+=1\{\hat\sigma_j^-,\hat\sigma_j^+\}_{+}=1、(σ^j−)2=0(\hat\sigma_j^-)^2=0 を満たし、異なる番号どうしでは交換する。したがって c^j\hat c_j の多項式全体は MM 個の量子ビットの演算子全体(2M2^M 次の行列全体)と同じ代数で、K\mathcal K は (C2)⊗M(\mathbb{C}^2)^{\otimes M} のいくつかの複製の直和である。とくに既約な表現は (C2)⊗M(\mathbb{C}^2)^{\otimes M} の上の1つしかなく、それは (6.3.3) の Fock 空間である。
証明

(i) 同じ番号 jj では、文字列 S^j=Z^1⋯Z^j−1\hat S_j=\hat Z_1\cdots\hat Z_{j-1} がエルミートで S^j2=1\hat S_j^2=1、しかも σ^j±\hat\sigma_j^\pm と交換するので、c^jc^j†=σ^j−σ^j+\hat c_j\hat c_j^\dagger=\hat\sigma_j^-\hat\sigma_j^+、c^j†c^j=σ^j+σ^j−\hat c_j^\dagger\hat c_j=\hat\sigma_j^+\hat\sigma_j^- で、和は ∣0⟩⟨0∣j+∣1⟩⟨1∣j=1| 0 \rangle \langle 0 |_j+| 1 \rangle \langle 1 |_j=1、c^j2=(σ^j−)2=0\hat c_j^2=(\hat\sigma_j^-)^2=0 である。番号が i<ji<j のとき、c^j\hat c_j の文字列は Z^i\hat Z_i を含み、それ以外の因子は c^i\hat c_i の因子と交換する。Z^i\hat Z_i と σ^i±\hat\sigma_i^\pm は反交換する(σ^i−Z^i=−σ^i−\hat\sigma_i^-\hat Z_i=-\hat\sigma_i^-、Z^iσ^i−=σ^i−\hat Z_i\hat\sigma_i^-=\hat\sigma_i^-)ので、c^ic^j=−c^jc^i\hat c_i\hat c_j=-\hat c_j\hat c_i、c^ic^j†=−c^j†c^i\hat c_i\hat c_j^\dagger=-\hat c_j^\dagger\hat c_i である。

(ii) P^k=1−2n^k\hat P_k=1-2\hat n_k とおく。n^k2=n^k\hat n_k^2=\hat n_k から P^k2=1\hat P_k^2=1 で、P^k\hat P_k はエルミートである。さらに n^kc^k=c^k†c^k2=0\hat n_k\hat c_k=\hat c_k^\dagger\hat c_k^2=0、c^kn^k=c^kc^k†c^k=(1−n^k)c^k=c^k\hat c_k\hat n_k=\hat c_k\hat c_k^\dagger\hat c_k=(1-\hat n_k)\hat c_k=\hat c_k なので、P^kc^k=c^k\hat P_k\hat c_k=\hat c_k、c^kP^k=−c^k\hat c_k\hat P_k=-\hat c_k で、P^k\hat P_k と c^k\hat c_k は反交換する。k≠jk\neq j では、前の節の計算のとおり n^k\hat n_k と c^j\hat c_j は交換するので、P^k\hat P_k と c^j\hat c_j も交換する。この2つの規則は (i) の Z^k\hat Z_k と σ^±\hat\sigma^\pm の規則を c^\hat c の側から言い直したもので、(i) の計算を逆にたどると、σ^j−\hat\sigma_j^- が同じ番号で {σ^j−,σ^j+}+=1\{\hat\sigma_j^-,\hat\sigma_j^+\}_{+}=1、(σ^j−)2=0(\hat\sigma_j^-)^2=0、異なる番号で交換することが出る(異なる番号では反交換が2回起きて符号が消える)。各 jj について σ^j±\hat\sigma_j^\pm が生成する代数は、命題 6.3.3 から2次の行列全体で、異なる jj の代数どうしは交換するので、全体は2次の行列全体の MM 個のテンソル積、つまり 2M2^M 次の行列全体である。2M2^M 次の行列全体の表現は、定義の表現 C2M\mathbb{C}^{2^M} の複製の直和に限られる(有限次元の行列環の表現論の基本的な事実)。既約なら複製は1つで、c^j\hat c_j で消える真空がちょうど1つあるので、(6.3.3) の Fock 空間に一致する。

定理の (ii) は、ボース粒子の Stone–von Neumann の定理(有限個の自由度の交換関係の表現は本質的に1つ。第2部第6章)のフェルミ粒子版である。ボース粒子では非有界な演算子を Weyl の形に直して扱う必要があったが、フェルミ粒子では演算子が有界で表現が有限次元なので、行列の代数だけで証明が終わる。モードが無限個になると、どちらの統計でも表現の一意性が崩れ、互いに同値でない表現が無数に現れる。これは 第8部第3章で扱う。

式を並べる

表 6.3.1 2つの統計の辞書。上半分は要請から直接出る違い、下半分はこの章の計算で出た違い。
ボース粒子フェルミ粒子
要請[a^i, a^j†]=δij\left[\hat a_i,\,\hat a_j^\dagger\right]=\delta_{ij}{c^i,c^j†}+=δij\{\hat c_i,\hat c_j^\dagger\}_{+}=\delta_{ij}、c^i2=0\hat c_i^2=0
1モードの表現無限次元・a^\hat a は非有界2次元(命題 6.3.3)・∥c^∥=1\lVert \hat c\rVert =1
占有数0,1,2,…0,1,2,\dots0,10,1(n^2=n^\hat n^2=\hat n)
波動関数対称・対称化した積反対称・Slater 行列式
多モードの基底の符号無し(ni+1\sqrt{n_i+1})(−1)∑j<inj(-1)^{\sum_{j<i}n_j}(Jordan–Wigner の文字列)
対称な順序の零点+ℏω/2+\hbar\omega/2−ℏω/2-\hbar\omega/2
1モードの ZZ・⟨n^⟩\langle \hat n \rangle1/(2sinh⁡x2)1/(2\sinh\frac x2)・1/(ex−1)1/(\mathrm{e}^x-1)2cosh⁡x22\cosh\frac x2・1/(ex+1)1/(\mathrm{e}^x+1)
占有数の分散nˉ(1+nˉ)\bar n(1+\bar n)nˉ(1−nˉ)\bar n(1-\bar n)
双一次の運動方程式iℏa^˙=ha^\mathrm{i}\hbar\dot{\hat a}=h\hat aiℏc^˙=hc^\mathrm{i}\hbar\dot{\hat c}=h\hat c(同じ)
対の項・Bogoliubovu2−v2=1u^2-v^2=1、ε2−Δ2\sqrt{\varepsilon ^2-\Delta^2}u2+v2=1u^2+v^2=1、ε2+Δ2\sqrt{\varepsilon ^2+\Delta^2}
2粒子の振幅perm⁡U\operatorname{perm}Udet⁡U\det U
コヒーレント状態の変数複素数Grassmann 数(第6部第6章)
有限モードの表現の一意性Stone–von Neumann(第2部第6章)定理 6.3.4

表のうち、ほかの部へつながる行を説明する。1モードの表現が2次元であることから、フェルミ粒子の1モードは行列力学の2準位系(スピン 12\frac12)と同じ代数を持つ(第2部第4章のスピンの代数、第2部第4章)。違いは異なるモードの間の符号だけで、それを運ぶのが Jordan–Wigner の文字列である。コヒーレント状態の行は経路積分への橋で、ボース粒子のコヒーレント状態は a^∣α⟩=α∣α⟩\hat a| \alpha \rangle =\alpha| \alpha \rangle の複素数 α\alpha で指定されるが、フェルミ粒子で同じことをすると c^2=0\hat c^2=0 から固有値 η\eta も η2=0\eta^2=0 を満たさなければならず、普通の数では η=0\eta=0 しか無い。そこで互いに反交換する数(Grassmann 数)を導入する。これは 第6部第6章で扱う。

学部の授業での書き方との対応

学部の量子力学の授業では、Pauli の排他律を「2個の電子は同じ量子状態に入れない」という規則として述べ、ヘリウム原子や周期表の電子配置を説明する。この章の言葉では、その規則は (c^†)2=0(\hat c^\dagger)^2=0 で、規則を別に置く必要は無く、反交換関係の要請に含まれている。統計力学の授業の Fermi 分布 1/(eβ(ε−μ)+1)1/(\mathrm{e}^{\beta(\varepsilon -\mu)}+1) は、(6.3.10) の1モードの ⟨n^⟩F\langle \hat n \rangle _{\mathrm F} に化学ポテンシャルを入れたもので、分母の +1+1 は2状態の和 1+e−x1+\mathrm{e}^{-x} から出ている。

どの粒子がボース粒子でどの粒子がフェルミ粒子かは、非相対論的な量子力学の中では決まらない。第2章の対称化の要請は、どちらの符号を選ぶかを粒子の種類ごとに外から決めている。実際、この節の (6.3.16) が示すとおり、粒子数を保つ2次のハミルトニアンでは運動方程式は2つの統計で同じで、Schrödinger 場を交換関係で量子化しても反交換関係で量子化しても矛盾は出ない(反交換関係による量子化を最初に示したのが Jordan と Wigner の 1928 年の論文である)。スピンが半整数の粒子はフェルミ粒子、整数の粒子はボース粒子というスピンと統計の関係は、相対論的な場の量子論で、エネルギーが下に有界であることと空間的に離れた観測量が交換することから導かれる(W. Pauli (1940), Phys. Rev. 58, 716)。Dirac 場を交換関係で量子化するとハミルトニアンが下に有界でなくなる様子は解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第5章で見られる。

例題 6.3.6 スピンの環とフェルミ粒子の環:境界の符号 ★★

オリジナル3つの量子ビットを環に並べたスピンの模型 H^s=−th∑j=13(σ^j+σ^j+1−+σ^j+1+σ^j−)\hat H_{\mathrm s}=-t_{\mathrm h}\sum_{j=1}^3(\hat\sigma_j^+\hat\sigma_{j+1}^-+\hat\sigma_{j+1}^+\hat\sigma_j^-)(σ^4≡σ^1\hat\sigma_4\equiv\hat\sigma_1、th>0t_{\mathrm h}>0)を考える。(この例題では時間 tt と区別するため、飛び移りの大きさを tht_{\mathrm h} と書く。)

  1. (1) ∣1⟩| 1 \rangle が2個の部分(粒子2個)の固有値を求めよ。
  2. (2) Jordan–Wigner 変換で H^s\hat H_{\mathrm s} をフェルミ粒子の演算子に書け。環を閉じる項 σ^3+σ^1−\hat\sigma_3^+\hat\sigma_1^- に何が付くか。
  3. (3) 周期境界条件のフェルミ粒子の環 −th∑j(c^j†c^j+1+h.c.)-t_{\mathrm h}\sum_j(\hat c_j^\dagger\hat c_{j+1}+\text{h.c.})(c^4≡c^1\hat c_4\equiv\hat c_1)の2粒子の固有値を求め、(1) と比べよ。
解答

(1) 粒子2個の状態は、空いている場所(穴)が1つの状態で、穴の位置 h=1,2,3h=1,2,3 で指定される。σ^j+σ^j+1−\hat\sigma_j^+\hat\sigma_{j+1}^- は粒子を j+1j+1 から jj へ移すので、穴を jj から j+1j+1 へ動かす。行列要素はすべて −th-t_{\mathrm h} で、穴が3点の環の上を符号なしで飛び移る行列になり、固有値は −2thcos⁡(2πm/3)-2t_{\mathrm h}\cos(2\pi m/3)(m=0,1,2m=0,1,2)、つまり −2th-2t_{\mathrm h}、tht_{\mathrm h}、tht_{\mathrm h} である。

(2) 隣どうしの項は (6.3.7) から σ^j+σ^j+1−=c^j†c^j+1\hat\sigma_j^+\hat\sigma_{j+1}^-=\hat c_j^\dagger\hat c_{j+1}(j=1,2j=1,2)で、文字列は消える。環を閉じる項は、c^3†=σ^3+Z^1Z^2\hat c_3^\dagger=\hat\sigma_3^+\hat Z_1\hat Z_2 と c^1=σ^1−\hat c_1=\hat\sigma_1^-、Z^1σ^1−=σ^1−\hat Z_1\hat\sigma_1^-=\hat\sigma_1^- から

c^3†c^1=Z^2 σ^3+σ^1−,つまりσ^3+σ^1−=Z^2 c^3†c^1\hat c_3^\dagger\hat c_1=\hat Z_2\,\hat\sigma_3^+\hat\sigma_1^-,\qquad\text{つまり}\qquad \hat\sigma_3^+\hat\sigma_1^-=\hat Z_2\,\hat c_3^\dagger\hat c_1

である(Z^22=1\hat Z_2^2=1)。この項が0にならないのは、モード1が占有でモード3が空の状態の上だけで、そのとき残りの粒子はモード2にいる分だけなので、全粒子数を NN とすると Z^2=(−1)N−1=−(−1)N\hat Z_2=(-1)^{N-1}=-(-1)^N である。したがって粒子数 NN の部分で

H^s=−th[c^1†c^2+c^2†c^3−(−1)Nc^3†c^1+h.c.]\hat H_{\mathrm s}=-t_{\mathrm h}\Bigl[\hat c_1^\dagger\hat c_2+\hat c_2^\dagger\hat c_3-(-1)^N\hat c_3^\dagger\hat c_1+\text{h.c.}\Bigr]

となり、環を閉じる項の符号は −(−1)N-(-1)^N になる。NN が奇数なら周期境界条件(c^4≡c^1\hat c_4\equiv\hat c_1)、偶数なら反周期境界条件(c^4≡−c^1\hat c_4\equiv-\hat c_1)のフェルミ粒子の環である。

(3) 周期境界条件では1粒子のエネルギーが −2thcos⁡(2πm/3)=−2th,th,th-2t_{\mathrm h}\cos(2\pi m/3)=-2t_{\mathrm h},t_{\mathrm h},t_{\mathrm h} で、2個のフェルミ粒子は異なる準位に入るので、2粒子の固有値は −th,−th,2th-t_{\mathrm h},-t_{\mathrm h},2t_{\mathrm h} で、(1) と一致しない。反周期境界条件では1粒子のエネルギーが −2thcos⁡(2π(m+12)/3)=−th,−th,2th-2t_{\mathrm h}\cos(2\pi(m+\frac12)/3)=-t_{\mathrm h},-t_{\mathrm h},2t_{\mathrm h} で、2粒子の固有値は −2th,th,th-2t_{\mathrm h},t_{\mathrm h},t_{\mathrm h} となって (1) と一致する。スピンの模型は、局所的には文字列の無い自由なフェルミ粒子に移るが、環を閉じる所にだけ粒子数の偶奇に依る符号が残る。この符号を無視すると、(3) のように答えが変わる。verify_ch6-03.py で、M=3,4,5M=3,4,5 のすべての粒子数について、スピンの環の行列と境界の符号 −(−1)N-(-1)^N のフェルミ粒子の環の行列が一致することを確かめた。

図

図 6.3.4 反交換関係から出る橋。実線はこの巻で両向きを証明した橋(第2章と、この章の命題 6.3.3・定理 6.3.4)、点線はほかの部で扱う橋。

木下の勉強ステータス

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AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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