解答
(1) N 原子の輪で k は 2π/(Na) おきに N 個あり、k と −k が同じエネルギーを持つ。[k,k+dk] と [−k−dk,−k] の2か所に 2πNadk 個ずつ、スピン2つでdN=42πNadk の状態が dε=∣ε′(k)∣dk=2ta∣sinka∣dk に入る。原子1個あたりにすると
2Dsite(ε)=N1dεdN=π22t∣sinka∣1=π4t2−ε22
(4t2sin2ka=4t2−ε2)。帯の端 ε=±2t で発散するのは1次元の van Hove 特異点である。∫−2tεF2Dsitedε=π2[arcsin2tεF+2π]=ν から εF=2tsin2π(ν−1)=−2tcos2πν。k で言えば、両スピンで詰めるので kF=πν/(2a) まで埋まり、εF=−2tcos(kFa) と同じである。
(2) (4.1.10) は D を 2Dsite に読み替えてそのまま使える(原子1個あたり・1スピンあたりで数えても比 Dsite′/Dsite は変わらない)。Dsite′/Dsite=ε/(4t2−ε2) なので、εF=−2t では Dsite′/Dsite=−2t2 で
μ−εF=−6π2(kBT)2DsiteDsite′=62π2t(kBT)2=1.163t(kBT)2
である。3次元の自由電子と逆に μ は上がる。εF は帯の下半分にあり、状態密度は下(帯の底の特異点)へ向かって増えるので、下に席が多いからである。kBT=0.05t では μ=−1.41421t+0.00291t=−1.41131t で、厳密な −1.41121t との差は 1.0×10−4t、補正 0.0029t の 3% である。
(3) 帯は ε→−ε で対称(Dsite(−ε)=Dsite(ε))で、ν=1 では εF=0 である。μ=0 と置くと、f(−ε)=1−f(ε) から∫2Dsite(ε)f(ε)dε=∫−2t02Dsite(f+1−f)dε(ε>0 の部分を −ε に移した)=∫−2t02Dsitedε=1 で、どの温度でも ν=1 を満たす。したがって μ(T)=0 は厳密であり、Sommerfeld 展開の各項も Dsite′(0)=Dsite′′′(0)=⋯=0 によってすべて 0 になる(例題 4.1.2 と違い、この場合はべきの外の項も無い)。
(4) (4.1.13) を原子1個あたりに書き直して C=3π22Dsite(εF)kB2T、2Dsite(−2t)=π2t2=πt2=t0.450。自由電子(ε=−2t+ta2k2)では、同じ kF=πν/(2a) で 2Dsite自由=π2a∣dε/dk∣1=π2a2ta2kF1=π2tν2、ν=21 で π2t4=t0.405。比は 4/π22/π=22π=1.111 である。帯は kF で放物線より平らになり(群速度が小さい)、同じ詰まり方でも Fermi 準位の席が多くなる。帯の底の有効質量で見積もると γ を 10% 小さく見積もることになる。数値で厳密に求めた比熱(kBT=0.02t で C/kB=0.02976)は、Sommerfeld の 0.02962 と 0.5% で一致する。
(5) ν=0.05 では εF=−1.99383t で、帯の底から 0.00617t しか離れていない。係数は −6π2Dsite′/Dsite=133.2/t と大きくなる。kBT=0.05t では μ=−1.99383t+133.2×0.0025t=−1.661t となり、厳密な −2.031t(帯の底より下)とまったく合わない。kBT=0.005t でも −1.9905t で、厳密な −1.9925t と 0.002t ずれ、補正の大きさ 0.0033t と同じ桁の誤差がある。Sommerfeld 展開は Dsite を εF のまわり幅 kBT で Taylor 展開したので、kBT が εF から帯の端(特異点)までの距離0.00617t より十分小さくなければ使えない。金属で kBT≪εF と言うときの εF は、正確には「Fermi 準位から状態密度が急に変わる所までの距離」である。kBT=0.05t では帯の底の状態の占有は 0.35 しかなく、電子は縮退した気体と古典気体の中間にある。これは半導体のキャリアの統計(第4部第5章)の状況である。