tecktom.com

何を削ったか・何の実験の量で確かめるか

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第1章 自由電子気体と Sommerfeld 展開
目次
  1. 削ったもの
  2. 何の実験の量で確かめるか
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部 第1章 §4.1.5 ★★★ 周期ポテンシャル・電子間の相互作用・格子との結合を削った。それでも低温の比熱は γT+βLT3\gamma T+\beta_{\mathrm L}T^3 の形になり、γ\gamma から読んだ状態密度は貴金属で自由電子の値の 1.01.0〜1.41.4 倍に収まる

削ったもの

この章の H^0\hat H_0 (4.1.2) は、金属の伝導電子から次の4つを削っている。

1つめはイオンの周期ポテンシャルである。イオンを一様にならしたので、帯の構造(ギャップ・Brillouin 域の境界・Fermi 面のゆがみ)がすべて消えた。周期ポテンシャルが弱ければ、その効果は Brillouin 域の境界の近くで小さなギャップを開くことだけで、Fermi 面が境界から離れている限り自由電子の結果はほとんど変わらない(第2部第5章)。帯の底の近くだけを使うなら、電子の質量を有効質量 m∗m^* に置き換えれば自由電子の式がそのまま使える(第2部第7章)。ただし4.1.3節以降の結果は、D(ε)D(\varepsilon ) の形を仮定せず D(εF)D(\varepsilon _{\mathrm F}) と D′(εF)D'(\varepsilon _{\mathrm F}) で書いてあるので、帯の構造を戻しても実際の D(ε)D(\varepsilon ) を入れればそのまま成り立つ。Sommerfeld 展開に要るのは、D(ε)D(\varepsilon ) が εF\varepsilon _{\mathrm F} のまわり幅 kBTk_{\mathrm B} T で滑らかなことだけである(総合問題で、これが破れる例を見る)。

2つめは電子どうしの相互作用である。ジェリウム (4.1.1) の平均の Coulomb エネルギーは打ち消すが、ゆらぎの効果は残る。その大きさの目安は、電子1個あたりの Coulomb エネルギー e2/(4πε0rs)e^2/(4\pi\varepsilon _0r_{\mathrm s}) と運動エネルギー ℏ2/(2mrs2)\hbar^2/(2mr_{\mathrm s}^2) の比 2rs/a02r_{\mathrm s}/a_0 で、銅では 5.35.3 になる。相互作用は小さくない。それでも自由電子の描像が多くの性質を当てるのは、Fermi 準位のまわりの励起については、相互作用が粒子の描像を壊さずに有効質量などの数を変えるだけで済むからである。その理由(遮蔽と Fermi 液体)は第5部第1章で述べる。

3つめは格子振動と電子–格子の結合である。イオンを止めた背景にしたので、フォノン(第3部第1章)も、電子がフォノンを出し入れすることも無い。低温の比熱では、格子の比熱 βLT3\beta_{\mathrm L}T^3 が電子の γT\gamma T と足し算で並ぶ。電子–格子の結合は、Fermi 準位のまわりの電子の質量を見かけ上重くし、γ\gamma を (1+λ)(1+\lambda) 倍にする(λ\lambda は結合の強さ)。これは電気抵抗(第4部第2章)と超伝導(第5部第4章)の起源と同じ結合である。

4つめは有限の大きさである。箱の大きさ L→∞L\to\infty(熱力学極限)で和を積分に置き換えた。金属の微粒子では準位がとびとびに残ることを第2部第3章で見た。

近似の裏付けは次のとおりである。Sommerfeld 展開そのものは数学の定理であり、4.1.2節の前提(DD が εF\varepsilon _{\mathrm F} の近くで滑らか)のもとで漸近級数として成り立つ。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 1/N1/N(熱力学極限) | 証明 証明済み(自由電子気体では和を積分に置き換えるだけで明らか。Coulomb 相互作用を戻したジェリウムでも、熱力学極限で自由エネルギー・圧力が存在することが証明されている〔E. H. Lieb and H. Narnhofer (1975), J. Stat. Phys. 12, 291〕) | 行き先 近似の数理 第3章・近似の数理 第13章

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの rs/a0→0r_{\mathrm s}/a_0\to0(高密度。運動エネルギーに比べて Coulomb エネルギーが小さい) | 証明 要確認(ジェリウムの基底エネルギーが高密度で自由電子の値に近づくことの厳密な前提と誤差の次数は原論文で未確認。実在の金属の rs/a0=2r_{\mathrm s}/a_0=2〜66 は小さくない) | 行き先 近似の数理 第6章・近似の数理 第13章

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 周期ポテンシャルの強さ/εF\varepsilon _{\mathrm F}(ほぼ自由な電子) | 証明 条件付き(Fermi 面が Brillouin 域の境界から離れていれば正則摂動。境界の近くでは縮退摂動が要る) | 行き先 近似の数理 第7章・近似の数理 第12章

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの kBT/εFk_{\mathrm B} T/\varepsilon _{\mathrm F}(Sommerfeld 展開) | 証明 証明済み(D(ε)D(\varepsilon ) が εF\varepsilon _{\mathrm F} の近くで滑らかなとき漸近級数として。級数は一般に発散し、e−εF/kBT\mathrm{e}^{-\varepsilon _{\mathrm F}/ k_{\mathrm B} T} の項はべきに現れない) | 行き先 近似の数理 第1章

何の実験の量で確かめるか

この章の結論のうち、もっとも直接に測れるのは電子比熱の係数 γ\gamma である。

低温の比熱。数 K 以下の金属の比熱は、電子の γT\gamma T とフォノンの βLT3\beta_{\mathrm L}T^3(Debye の T3T^3 則。解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第3章)の和

C=γT+βLT3,βL=12π45RΘD3(1 mol あたり)(4.1.19)C=\gamma T+\beta_{\mathrm L}T^3,\qquad \beta_{\mathrm L}=\frac{12\pi^4}{5}\frac{R}{\Theta_{\mathrm D}^3}\quad(1\,\mathrm{mol}\text{ あたり})\tag{4.1.19}

で表される。C/TC/T を T2T^2 に対して描くと直線になり、切片が γ\gamma、傾きが βL\beta_{\mathrm L} を与える(ΘD\Theta_{\mathrm D} は Debye 温度。添字 L は格子を表し、逆温度 β\beta と分けるために付けた)。電子の比熱が格子の比熱を上回るのは T<γ/βLT<\sqrt{\gamma/\beta_{\mathrm L}} の低温だけである。

銅・銀・金について、Martin は 2.52.5〜30 K30\,\mathrm K の比熱を測り、それ以下の温度の測定と合わせて解析して、γ\gamma を銅 0.6910.691、銀 0.6400.640、金 0.689 mJ mol−1K−20.689\,\mathrm{mJ\,mol^{-1}K^{-2}}(誤差はいずれも ±0.001\pm0.001)、銅の低温極限の Debye 温度を約 344 K344\,\mathrm K と報告した(D. L. Martin (1973), Phys. Rev. B 8, 5357)。これを自由電子の値と並べると次のようになる。自由電子の値は、格子定数(銅 0.36150.3615、銀 0.40860.4086、金 0.4078 nm0.4078\,\mathrm{nm}。与えられた値として使う)と1原子あたり伝導電子1個から (4.1.13) で計算した。

金属nn(1028 m−310^{28}\,\mathrm{m^{-3}})γ自由電子\gamma_{\text{自由電子}}(mJ mol−1K−2\mathrm{mJ\,mol^{-1}K^{-2}})γ実測\gamma_{\text{実測}}(mJ mol−1K−2\mathrm{mJ\,mol^{-1}K^{-2}})比
銅 Cu8.478.470.5030.5030.6910.6911.371.37
銀 Ag5.865.860.6420.6420.6400.6400.9970.997
金 Au5.905.900.6400.6400.6890.6891.081.08

比は 11 の近くに収まっている。最も単純な模型が、測った量を桁だけでなく数十 % の精度で当てている。比が 11 からずれる分は、削ったもののうち1つめ(帯の構造で D(εF)D(\varepsilon _{\mathrm F}) が変わる)と3つめ(電子–格子の結合で γ\gamma が 1+λ1+\lambda 倍になる)が混ざったものである。比を「熱で見た有効質量」mth∗/m=γ実測/γ自由電子m^*_{\mathrm{th}}/m=\gamma_{\text{実測}}/\gamma_{\text{自由電子}} と呼ぶことが多い。γ\gamma だけからは両者を分けられず、分けるには帯の計算か別の測定が要る。

スピンだけの磁化率。Pauli 常磁性 (4.1.15) は、全体の磁化率を測っても内殻の反磁性と Landau 反磁性に埋もれる。伝導電子のスピンだけに反応する方法として、伝導電子のスピン共鳴の強度や、原子核の共鳴周波数が伝導電子のスピン偏極でずれる量(Knight シフト)がある。これらから求めたスピンの磁化率と γ\gamma を (4.1.18) で組み合わせると、Wilson 比が実験の量になる。

Fermi 準位の形。光電子分光で、光で叩き出した電子のエネルギー分布を測ると、Fermi 準位で分布が落ちる段差が見え、その幅は温度とともに kBTk_{\mathrm B} T 程度に広がる。図 4.1.1 の ff の形を直接見る測定である。

例題 4.1.5 銅の比熱で電子が格子に勝つ温度 ★★

オリジナル銅の γ=0.691 mJ mol−1K−2\gamma=0.691\,\mathrm{mJ\,mol^{-1}K^{-2}}(Martin 1973)と、Debye 温度 ΘD=344.3 K\Theta_{\mathrm D}=344.3\,\mathrm K(与えられた値として使う)を使う。R=8.314 J mol−1K−1R=8.314\,\mathrm{J\,mol^{-1}K^{-1}} とする。

  1. (1) (4.1.19) の βL\beta_{\mathrm L} を求めよ。
  2. (2) 電子の比熱と格子の比熱が等しくなる温度 T∗T^* を求めよ。1 K1\,\mathrm K では電子の比熱は格子の何倍か。
  3. (3) T∗/TFT^*/T_{\mathrm F} を求め、T∗T^* の付近で Sommerfeld 展開の1項目だけを使ってよい理由を述べよ。
  4. (4) γ\gamma の実測値と自由電子の値 0.503 mJ mol−1K−20.503\,\mathrm{mJ\,mol^{-1}K^{-2}} の比から、λ\lambda を電子–格子の結合だけで説明するとしたらいくらになるか。この見積もりが上限にしかならない理由を述べよ。
解答

(1) βL=12π45×8.314/344.33=4.76×10−5 J mol−1K−4\beta_{\mathrm L}=\frac{12\pi^4}{5}\times8.314/344.3^3=4.76\times10^{-5}\,\mathrm{J\,mol^{-1}K^{-4}}。

(2) γT∗=βLT∗3\gamma T^*=\beta_{\mathrm L}T^{*3} から T∗=γ/βL=6.91×10−4/4.76×10−5=3.81 KT^*=\sqrt{\gamma/\beta_{\mathrm L}}=\sqrt{6.91\times10^{-4}/4.76\times10^{-5}}=3.81\,\mathrm K。1 K1\,\mathrm K では γT/(βLT3)=γ/βL=14.5\gamma T/(\beta_{\mathrm L}T^3)=\gamma/\beta_{\mathrm L}=14.5 倍で、電子が比熱の大部分を担う。室温では電子比熱が格子の 0.6%0.6\% だったこと(例題 4.1.3)と逆で、T3T^3 と TT の減り方の違いが数 K で順位を入れ替える。

(3) T∗/TF=3.81/(8.16×104)=4.67×10−5T^*/T_{\mathrm F}=3.81/(8.16\times10^4)=4.67\times10^{-5}。Sommerfeld 展開の次の項は1項目の (T/TF)2∼10−9(T/T_{\mathrm F})^2\sim10^{-9} 倍で、測定の精度よりはるかに小さい。C/TC/T を T2T^2 に対して描いた直線の切片を γ\gamma と読んでよいのは、この小ささのためである。

(4) 比は 0.691/0.503=1.370.691/0.503=1.37 なので、全部を電子–格子の結合に帰せば λ=0.37\lambda=0.37 である。ただし銅の Fermi 面は Brillouin 域の境界に触れて球からずれており、帯の構造で D(εF)D(\varepsilon _{\mathrm F}) そのものが自由電子の値と違う。その分を帯の計算で除かない限り、λ\lambda は確定しない。比 1.371.37 は「帯の効果」と「格子の効果」の積である。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ