量子力学の様々な構成方法 第3部 第7章 §3.7.6 ★★★ 経路積分を作用の変分で微分すると Schwinger の作用原理 δ⟨b∣a⟩=ℏi⟨b∣δS^∣a⟩ になり、端の変分が Schrödinger 方程式と運動量の表示を、内部の変分が Heisenberg の運動方程式を与える
作用原理を経路積分から出す
J. Schwinger は、遷移振幅の変分を作用の変分の行列要素として与える
δ⟨b,t2∣a,t1⟩=ℏi⟨b,t2∣δS^∣a,t1⟩(3.7.20)
を量子力学(と場の量子論)の出発点の原理に置いた(J. Schwinger (1951), Phys. Rev. 82, 914–927)。δS^ は作用の変分を演算子にして時間順序に並べたものである。経路積分の側では、これはほとんど自明である。⟨b,t2∣a,t1⟩=∫DxeiS[x]/ℏ で、作用に含まれる何か(ポテンシャル、端点、端の時刻、外から加えた力)を少し変えると、被積分関数はeiS/ℏ→eiS/ℏ(1+ℏiδS) と変わり、δS を差し込んだ経路積分は時間順序積の行列要素になる(第3部第5章)。したがって式 (3.7.20) は、Feynman の要請を作用のパラメータについて微分した形で、計画で「経路積分の微分版」と呼んだのはこの意味である。逆に Schwinger は、経路積分を持ち出さずに式 (3.7.20) を公理として、交換関係と運動方程式を導いた。以下、何を変えると基準のどの式が出るかを順に書く。
3種類の変分
(i) 終点の位置と時刻を変える。端を固定しない作用の変分は、古典力学と同じく端の項 δS=pfδxf−Hδtf を持つ(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第3章)。式 (3.7.20) に入れると
−iℏ∂xf∂⟨xf,tf∣a⟩=⟨xf,tf∣p^∣a⟩,iℏ∂tf∂⟨xf,tf∣a⟩=⟨xf,tf∣H^∣a⟩(3.7.21)
を得る。前者は位置表示での運動量の表示 p^=−iℏ∂x で、後者は Schrödinger 方程式である。古典力学で ∂Scl/∂xf=pf、−∂Scl/∂tf=H(Hamilton–Jacobi)だったものが、振幅についての演算子の等式に置き換わる。
(ii) 経路の内部をずらす。端を固定して経路の内部を x(t)→x(t)+δx(t) とずらすと、積分変数の付け替えなので振幅は変わらない。一方 δS=−∫δx(mx¨+V′(x))dt なので
⟨b∣T[mx^¨H+V′(x^H)]∣a⟩=0(3.7.22)
で、これは Heisenberg の運動方程式(第2部第3章)の行列要素である。時間分割した形が第3部第5章の部分積分の恒等式(Schwinger–Dyson 方程式)で、そこでは F=xk と選ぶと交換関係 [x^,p^]=iℏ も出た。
(iii) ハミルトニアンの中のパラメータを変える。V→V+δV なら δS=−∫δVdt でδ⟨b∣a⟩=−ℏi∫dt⟨b∣TδV(x^H(t))∣a⟩。これは時間に依存する摂動論の1次で、繰り返せば Dyson 級数になる。固有状態の間で時間を長くとると、Feynman–Hellmann の定理 ∂En/∂λ=⟨n∣∂λH^∣n⟩ になる。
例題 3.7.6 Mehler 核で作用原理を確かめる ★★
オリジナル調和振動子の Mehler 核 K=F(t)eiScl/ℏ、F=mω/(2πiℏsinωt)、Scl=2sinωtmω[(xf2+xi2)cosωt−2xfxi](第3部第3章)について答えよ。
- (1) −iℏ∂xfK を求め、古典の終点の運動量 pf との関係を述べよ。
- (2) iℏ∂tK/K を古典のエネルギー Ecl=−∂Scl/∂t と残りに分けよ。残りの項は何を表すか。
解答
(1) F は xf によらないので −iℏ∂xfK=(∂Scl/∂xf)K=pfK、pf=sinωtmω(xfcosωt−xi)。式 (3.7.21) の前者の行列要素が、2次の作用では古典の pf を掛けることに厳密に一致する。量子の揺らぎは xf によらない前因子にだけ入っている。
(2) iℏ∂tlnK=−∂tScl+iℏF′/F で、−∂tScl=2mpf2+2mω2xf2=Ecl(Hamilton–Jacobi)、残りはiℏF′/F=−2iℏωcotωt である。残りは H^ の中の p^2 が pf2 と違う分、つまり p^2K=pf2K−iℏ(∂xfpf)K の第2項 −iℏmωcotωt を 2m で割ったものに等しい。式 (3.7.21) の後者 iℏ∂tK=H^K は、古典のエネルギーと演算子の順序から出る補正の和として成り立つ。
この章の橋の一覧
この章で出した結果が、同値性の地図(第1部第1章)のどの橋に当たり、基準やほかの部でどう書かれるかを並べる。
| この章の経路積分の言葉 | 基準・ほかの部での同じもの | 行き先 |
| 瞬間子の作用 S0=∫2mVdx | WKB の障壁の下の ∫∣p∣dx | 第3部第4章・近似の数理 第7章 |
| 瞬間子の希薄気体の和 | 最低2準位 E± のスペクトル分解 | 3.7.1節(式 (3.7.7)) |
| 分類の重み e2πiwφ | ゲージで A を消した後の捻れた境界条件/線束のホロノミー | 第10部第3章 |
| 基本群の表現 χ=±1 | 対称化の公理(ボース・フェルミ) | 第6部第2章 |
| TrK と Fourier 変換 | 固有値問題(代数) | 第2部第4章 |
| Wiener 測度・Feynman–Kac | e−βH^ の積分核・Nelson の拡散 | 第3部第6章・第7部第6章 |
| 時間分割の極限(Trotter・Kato) | 自己共役な H^ の選択 | 近似の数理 第3章 |
| Schwinger の作用原理 | Heisenberg の運動方程式・Schrödinger 方程式 | 第2部第3章 |
学部の授業での書き方と並べると、トンネルの分裂は WKB の接続公式から ΔE=πℏωexp(−ℏ1∫∣p∣dx) の形で出すことが多い。指数は瞬間子と同じで、前因子は接続の取り方で決まる。Aharonov–Bohm 効果は、ゲージ変換で A を消して波動関数の位相 eiq∫A⋅dr/ℏ を経路ごとに読む書き方が標準的で、それは式 (3.7.10) の w=0,1 の2項だけを残したものに当たる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com